『舞いあがれ!』は言葉によって進んでいく物語 貴司が言い当てた陽菜の本心
本作が言葉によって進んでいく物語であることは、これまでも随所で描かれてきたが、残り1カ月を切った今、そのことがより鮮明になった。町工場の窮状について、舞は「周りに合わせて言われるままに値段下げてくうちに、自分のええとこなくしてしまうねん」と語る。埋もれている町工場の技術と社長たちの思いをすくい上げて形にすることと、「キモい」で終わらせずに自分の本当の気持ちを伝えることは、同じベクトルを持っている。胸の奥に押し込んだ未分化な感情を言葉にして取り出すために短歌があり、また相談相手が必要にもなる。
一方で、言葉にすることはリスクもある。「キモい」と口にしたことで、陽菜が大樹と気まずくなったように、自分の言った言葉が相手の反発を引き起こし、言った自分もそのことで傷つくというのはよくあることだ。悠人(横山裕)が「起業は簡単じゃない」「どうやって利益を出すつもりや」と舞に尋ねたのも、舞が真剣に自分の考えを伝えたからで、悠人に指摘されることで、舞は夢の具体化に向けてさらに検討を重ねることになった。「向かい風を受けて高く飛ぶ」がテーマの本作で、言葉を媒介にして夢を実現する最終フライトの航路が見えてきた。
舞や陽菜と話す中で、貴司自身も自分が何をしたいかを見出した。北條(川島潤哉)に打診された短歌教室は月7日の約束で各地を訪れることになった。貴司がいないデラシネはバイトに任せる。ちなみに、番組公式Twitterアカウントが公開した北條の企画書によると、短歌教室は第1回が五島列島だが、第2回は高知の牧野氏植物館で開催。2023年度前期NHK連続テレビ小説『らんまん』主人公ゆかりの場所であり、次作への期待も否応なしに高まる。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK