『大奥』冨永愛が中島裕翔に情報収集を任せる ドラマオリジナル描写に込められた願い

 大奥創設当初からの歴史を書き記してきた村瀬(岡山天音→石橋蓮司)が急逝した。それに伴い、吉宗(冨永愛)が読んでいる『没日録』の続きが紛失。何者かにとって、消えてしまった過去数年の記録に都合の悪い真実が隠されていたのでは、と吉宗は疑いながらも歴史を紡ぐ。

 NHKドラマ10『大奥』第8話は再び、八代将軍吉宗の時代へ。原作から大きく改変されたストーリーが、性別や身分などのあらゆる差を超え、人々が足りない部分を補い合う社会の可能性を提示した。

 徳川吉宗といえば、享保の改革。そう日本史の授業で教わった人が多いのではないだろうか。ひっ迫する幕府の財政再建のため、吉宗は大々的な改革を行った。それが江戸時代の三大改革の一つ、享保の改革だ。原作でも吉宗が行った様々な政策について触れられてはいたが、今回のドラマではその一つひとつの内容をより深掘り。また合わせて、原作ではあまり目立たなかったキャラクターの造形にさらなる深みを持たせる。

 その一人が、MEGUMI演じる大岡越前守忠相。この時代、日本は米の値段が下がり、それ以外の物の値段が高騰する「米価安の諸色高」の状況が続いていた。米を収入とする幕府は当然財政難となり、さてどうするべきかと吉宗が意見を求めたのが普請奉行としての仕事ぶりに定評のある忠相だ。銭勘定は素人とした上で的を射た発言を述べる彼女を吉宗は町奉行に抜擢し、米価の調整を一任。歯に衣着せぬ物言いで、芸能界のご意見番としての顔も持つMEGUMIが演じることで忠相の聡明さが際立つ。

 また、吉宗は積極的に庶民の声にも耳を傾けた将軍で、誰もが投書できる目安箱を設置したことでも有名。国のため民のため、奮闘する姿がそこにある。だが、目的に向かって猪突猛進すればするほど、何かを見落としてしまいがちだ。

 政に誠意を尽くす一方で、とりわけ色恋に興味のない吉宗は世継ぎをもうけさえすればいいと大奥の男たちを無意識のうちに種馬扱いしていた。そのことを、宿下がりを自ら申し出た大奥総取締の藤波(片岡愛之助)に指摘される。自分たちが種馬に過ぎないことは承知の上。だが、それを隠し、あたかも情の通ったものに彩ってきたのが大奥だと藤波は言う。家光(堀田真由)や綱吉(仲里依紗)が世継ぎを生むという使命に苦しんできたのと同じく、そこに種を根付かせる役割を与えられた男たちの中にも苦しんだ者がいる。

 その苦しみを少しでも和らげようと、将軍と大奥の男たちが語らい、季節の移ろいを愛でる場を設けたのが有功(福士蒼汰)だった。それを知ってか知らずか、藤波は有功の意志を受け継いでいる。片岡愛之助の美しい所作、吉宗を見つめるまっすぐな瞳が彼の矜持を感じさせた。

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