『愛だと言って』キム・ヨングァン×イ・ソンギョンのケミに注目 愛が凍った心を溶かす

「誰かの孤独を察することが、愛の始まりではないかと私は思います」

 2月22日よりディズニープラスで配信中の『愛だと言って』。本作は、キム・ヨングァンとイ・ソンギョンのW主演のロマンス復讐劇で、復讐を誓った相手を愛してしまった女性と、ある日突然復讐相手にされてしまった男性の、“出会うべきではなかった男女”の複雑な恋愛模様が描かれる。

 物語は、「もし、あなたが誰かを理解し、許し、愛したいのならできるだけ長くその人の後ろ姿を見つめろ。そうすれば無理に理解しよう、許そう、愛そうとせずとも、その寂しそうな後ろ姿にいつしか涙しているはずだ」という言葉から始まる。イ・ソンギョン演じるシム・ウジュは、父の不倫によって、“男は全員不倫した父親と同類”だと思いながら生きている。ウジュが17歳の時に、父親であるシム・チョルミン(アン・ネサン)は、母の同級生である女性に溺れて全財産を持って家から出て行ってしまう。ウジュの家の家族写真の父は、真っ黒に塗りつぶされて、リビングに飾ってある。嫌でも目に入る場所に、真っ黒に塗りつぶしたままの写真を飾り、朝な夕な目にするのは、傷口に塩を塗り続けて生きてきた象徴のようで、心情を察するに余りある。

 光のない眼差しで生きるウジュの表情は、未だ立ち直れず、心は父が出て行ったあの日のままのよう。そんなある日、ウジュは嫌な予感を感じるのだが、その予感は当たり、ウジュのもとに父が亡くなった知らせが届く。ウジュは、父の葬儀にその場にそぐわない出で立ちで出かけて行く。葬儀場で、父を奪った愛人であるマ・ヒジャ(ナム・ギエ)と対峙したウジュは、家を奪われたことを知り、愕然とする。

 20年間暮らした家を、父の死後2日で追い出されたウジュと、姉ヘソン(キム・イエウォン)、弟ジグ(チャン・ソンボム)の3姉弟。姉のヘソンは銀行で働く係長だが、男を見る目がなく、付き合う相手は、独身だと偽る既婚者や浮気者などクズばかり。弟ジグは公務員試験の勉強中で、ウジュが姉弟の中心人物としてふたりを支えている。不倫した父を嫌う姉のヘソンが、皮肉にも同じような相手ばかりに惚れてしまうのは、どこかにファーザーコンプレックスがあるようにも、母に似たともいえるようだ。3姉妹の友人として、ウジュの学生時代の友人であるユン・ジュン役を、現在『アイランド』での熱演も話題のソンジュンが演じている。物語の中でウジュに恋心があるのか、はたまた姉ヘソンがジュンと良い恋をしそうな気配もあり、サブカップルのストーリーとしての展開が期待できそうで楽しみなところだ。

 ウジュは、ヒジャが家を売ったお金を息子のハン・ドンジン(キム・ヨングァン)に渡したことを知り、家を返してもらおうとドンジンを訪ねていく。しかし、ウジュが目にしたドンジンは、高級車を乗り回し、高そうな家に住む男だった。その姿を見たウジュは、ドンジンに復讐することを誓い、ドンジンが経営する会社にアルバイトとして潜り込み、ドンジンに近づいていく。

 ドンジンもウジュも、それぞれ過去のトラウマを抱えているのだが、そのことが今も心の中心を占めていて時限爆弾を抱えているような状態だ。埋め込まれた爆弾を溶かすことができるのは、愛しかないのだろう。家族や友人、自分への愛でもきっとそれは溶かすことはできるのだと思う。けれど、人が甘美に感じるのは、想いの発生、気づき、通じ合い、融合へと至る恋愛を通じて成長するプロセスだろう。目と目が合い、心を語り、トラウマを癒し合い、気づけば心の中の冷たいトラウマが愛で溶けていく。感性が空気までを愛の色に染めていき、ピンク色の輝きを放つものが心に浸透し、凍ったものを溶かし昇華させていく。その一部始終を画面のこちら側で目撃し、感じている私たちの胸にもそれはシンクロし、ハートがキュンキュンしたり、ドキドキしたり、ジタバタと体で喜びを表したくなるほどの歓喜を感じる。

 アンデルセンの童話である『雪の女王』では、氷のかけらが胸に刺さったカイをゲルダが涙で溶かしたが、本作のドンジンとウジュは共にいわばかけらが刺さった状態だ。復讐というかけらの刺さったウジュが、ドンジンへの思いもよらない感情の芽生えに戸惑い、一方のドンジンも、自分を尾行するウジュに不信感を抱くも、チェソン展覧の情報漏洩にウジュが関与していないことが分かり、態度を軟化させてゆく姿が早速第2話のラストで描かれ始めた。

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