『どうする家康』有村架純が松本潤に向けた微笑みの意味 “女大鼠”松本まりかの強烈さも

 『どうする家康』(NHK総合)第6回「続・瀬名奪還作戦」。瀬名(有村架純)と子どもたちを取り戻す作戦は失敗に終わったが、本多正信(松山ケンイチ)がさらなる秘策を提案する。今川家重臣を生け捕りにし、瀬名たちと人質交換するというものだ。元康(松本潤)はその策に一縷の望みを託した。正信の命を受け、服部半蔵(山田孝之)は鵜殿長照(野間口徹)が守る上ノ郷城に忍び込み、長照の息子2人の生け捕りに成功する。人質交換の談判をするための準備は整った。

 松本潤演じる元康は、上ノ郷城から火の手が上がるまでずっと不安に駆られている。しきりに足をゆすり、お腹をさすりと落ち着きがない。しかし元康は第4回で、信長(岡田准一)の妹・お市(北川景子)から「欲しいものは、力で奪い取るのです」という言葉をかけられ、瀬名と子どもたちをこの手で取り返すという覚悟を決めた。策の成否には不安を抱えつつも、半蔵に「やれ」と命じた際の鋭い声色や、今川氏真(溝端淳平)と河原を挟んで対峙していたときの真剣な眼差しからは、その強い意志が感じられる。

 一方、瀬名は、目の前でお富(鯉沼トキ)やおふみ(柴田浩味)らを殺されたうえ、関口氏純(渡部篤郎)と巴(真矢ミキ)、子どもたちとともに牢に入れられ、憔悴しきっている。それでも、子どもたちには明るい姿を見せようと、竹千代(松井稜樹)とにらめっこをする瀬名の健気な笑顔が心苦しい。関口家の侍女として瀬名の世話をしてきたたね(豊嶋花)との別れでは、涙を流すたねの姿を見て、「たねや、今までありがとう。達者での」と心からの感謝を伝えていた。

 人質交換の談判が成立し、川向こうに瀬名と子どもたちの姿が現れると、元康は前のめりになって駆け寄ろうとした。瀬名も元康の姿を見つけると、ほんの少し安堵したように見える。けれど、瀬名の涙ぐむ姿には元康と再会したことへの喜びだけでなく、命を賭して瀬名と子どもたちを守り抜いた父・氏純、母・巴を失った悲しみにも満ちている。元康を前にした瀬名は涙を堪えるように口元に笑みを浮かべ、元康に微笑みかけるのだが、その表情のまま体を震わせ、涙する姿には、父と母とともに元康のもとへと帰ることが叶わなかった彼女の複雑な心持ちがうかがえてとても切なかった。のちの回想で語られるが、瀬名が元康に向かって微笑んでみせたのは、氏純が今生の別れを前にして瀬名にかけた「そなたは笑顔が似合う。笑顔を忘れるでないぞ」という言葉を、しかと胸に刻んだからではないだろうか。

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