『舞いあがれ!』横山裕が悠人の絶望を体現 虚ろな姿に“寄る辺のない寂しさ”が浮かぶ

 だから、「ここにおる全員、関係ないことないねん」と言う結城(葵揚)。その一言はこれまでいかに悠人が一人でいろんなことを抱えてきたかを物語っていた。悠人の状況を慮るのが結城というのもかなり意味があることに思える。結城はIWAKURAがまだ小さな町工場に過ぎなかった頃からの従業員であり、浩太(高橋克典)やめぐみの側で悠人と舞の成長を見守ってきた、まさにお兄ちゃんとも言える存在だ。身体が弱かった舞に浩太たちがつきっきりで、悠人がさみしい思いをしているであろうこともどこかで分かっていたのではないだろうか。

 悠人は幼い頃からしっかり者で、何でも一人で「できた」から両親はどこかで安心していた部分がある。だけど、悠人の場合は何でも一人で「できた」のではなく、何でも一人で「やらざるを得なかった」と言う方が近い。助けてもらいたくても、浩太もめぐみも工場のことや舞のことで精一杯だった。悠人が人に期待しなくなり、自分だけで全てを抱え込むようになったのは必然だ。

 一方で、舞もどこかでそのことに気づいており、「誰かに助けてって言えてんのやろか」と悠人を心配する。本来ならば、もっと早くに家族が手を差し伸べられたら良かったのかもしれない。でも、家族だからこそ深く踏み込めないのも分かる。

 雨に打たれながら、よろよろと彷徨う悠人。闇夜に溶け込むその虚ろな表情が、一瞬番組が変わったかのようなシリアスなシーンを作り出す。倒れ込んだ場所は舞もよく立ち寄る近所の公園。どうやら次回は久留美(山下美月)とその父・佳晴(松尾諭)が悠人を介抱するらしい。怪我でラグビーの選手を引退した経験のある佳晴が、そして婚約が破談になったばかりの久留美が、失意のどん底にいる悠人の救世主となるのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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