『星降る夜に』北村匠海の一挙一動に翻弄される 豪快さと繊細さの演じ分けに注目

 『星降る夜に』(テレビ朝日系)で北村匠海演じる一星がまるで猫みたいだ。捕まえようとしたら遠くに離れていき、そっぽを向いたらこっちに寄ってくる。そんな彼の一挙一動に翻弄される日々がこれから続くのだろう。

 1月17日より放送開始となった本作は、ラブストーリーの名手と呼ばれる脚本家・大石静が手がける完全オリジナルのドラマだ。孤独に生きる35歳の産婦人科医・鈴(吉高由里子)と、生まれつき耳が聞こえない10歳下の遺品整理士・一星(北村匠海)。初回の放送はいきなり2人のキスシーンから始まった。

 出会ったばかりでまだお互いを何も知らないにもかかわらず、一星から半ば強引に重ねた唇。そこに合意がないことはどうしても気になってしまうが、“自然な出会い”というものがめっぽう減ってしまった今、満天の星空の下で突然始まった恋に胸が高鳴る。

 “純度120%のピュア・ラブストーリー”と銘打ち、こうしたロマンチックなシチュエーションとともに鈴と一星が運命の恋を育んでいく過程を映し出す本作。一方で、その中で排泄物、吐瀉物、アダルトビデオといった一瞬興ざめしてしまうような要素もこのドラマは積極的に盛り込んでいく。そこには、いろんなものをタブー視することなく人の“生”と“死”を見つめようとする姿勢を感じた。そんなある種の豪快さと繊細さの両方を内包した本作と、北村の演技は非常に相性がいいように思う。

 2017年の映画『君の膵臓をたべたい』(以下、『キミスイ』)でブレイクを果たしてから現在に至るまで、多ジャンルの作品に出演してきた北村。元々は、『キミスイ』で演じた、人と深く関わることを避け、自分の世界に閉じこもる高校生「僕」役をはじめ、北村は内に秘めた演技が得意だ。同作では、そんな僕が膵臓の病気で余命わずかな桜良(浜辺美波)という他者と関わるうちに豊かな感情を得ていくのだが、彼女を失った後、僕が突然堰を切ったように泣き出すシーンが忘れられない。

 また、ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)では、一見寄木細工ミュージアムで働く真面目で穏やかな青年だが、実は何人もの女性を殺めたシリアルキラーの羽喰十斗役でその狂気を最後に爆発させた。北村が感情を限界まで溜めて溜めて、ようやく解放させた時、観る人はグッと心を掴まれる。

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