卵を見る目が変わる? 実写アニメ『ぐでたま』のシニカルでちょっとビターな物語

 サンリオの人気キャラクター「ぐでたま」を主人公にしたショートドラマシリーズ『ぐでたま 〜母をたずねてどんくらい〜』が、Netflixで配信中だ。これがなかなか可愛い。アニメやイラスト以上に尻がプリプリしていて、シニカルでちょっとビターな物語が現実空間で展開される。

 主要登場キャラクターのぐでたまたちは3DCGによって作られているので、本作のメインキャラクターはアニメーションだからアニメーション作品かというと、そうとは言えない。プロモーションでは「実写化」という言葉が使われている通り、現実空間を舞台にしており、いわば『ロジャー・ラビット』のような実写とアニメーションのハイブリッド作品だ。こうした作品は、現実と虚構が混淆した独特な魅力を放つもので、それがぐでたまのおっとりした魅力とメッセージ性を底上げすることに成功している。

実写とアニメーションのハイブリッド空間の魅力

 実写映像とアニメーションを合成させる作品は、映画史初期から存在する。むしろ、初期のアニメーション作品は実写空間とアニメーションを融合させた作品が多い。

 世界で最初のアニメーション作品のひとつと言われる『愉快な百面相』は、生身の人間の手が映ると、その手が黒板に絵を描いていき、その絵がアニメーションとなって動き出すという筋書きだし、ウィンザー・マッケイの『恐竜ガーティ』はマッケイ自身が絵で描かれた恐竜と共演している。近年、日本でも紹介されたサイレント映画作家チャーリー・バワーズの作品も実写映像とストップモーションアニメーションを駆使した独特の映像世界が持ち味だ。現実空間で存在しない空想の産物を生き生きと動かしてみたいという欲求は、昔から存在したのだ。

 映画史初期で、実写とアニメーションを融合させるのを得意としたのは『ポパイ』と『ベティ・ブープ』などで知られるフライシャー兄弟だ。この兄弟の代表作『インク壺』シリーズは、人間の絵描きがインクで描いた道化師が動き出し、騒動を巻き起こしまたインクに戻っていく筋書きがほとんどで、アニメーションキャラクターの道化師ココと人間のドタバタの掛け合いが見事だ。

 時を経ると、『ロジャー・ラビット』のように、長編映画で同様の試みをする作品も登場した。近年でもディズニープラスで配信されている『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』や、ワーナー・ブラザースの『トムとジェリー』などが製作されている。

 この手の作品群の面白さは、生身の人間とアニメーションキャラクターという異質な者同士が同時に同じ空間に存在していることだ。実写とアニメーション空間は、それぞれ別々のものだと認識されることが多いが、違うからこそ、その壁を越境したいという欲求も生まれるし、視聴者自身が生きている現実的空間に虚構の存在が紛れ込み、生き生きと躍動している様に新鮮な驚きがある。

 こうした実写とアニメーションが混淆した空間は、今日では様々なスマートフォンアプリのおかげでかなり日常的なものになりつつある。ARを活用した『ポケモンGO』などはその典型で、現実空間にポケモンキャラがいることの興奮を味わえるゲームとして人気を博している。

 知らない世界に飛び込むのは、誰しもワクワクするものだ。私たちの生きる次元とは異なるところから生まれたキャラクターたちが、こうして躍動している様を見ると、自分も次元を超えられるのではとワクワクできる。実写とアニメーションが混淆した作品には、そういう興奮を呼び起こす力がある。

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