結城を動かしたのが浩太への恩義だったことは想像にかたくない。結城が口にした「仕事する楽しさ」には、仲間と切磋琢磨しながら一つのものを作り上げる喜びがあった。その中心にいたのは亡き浩太で、「小さなネジの大きな夢」を掲げて進む中で一人ひとりの社員を家族同然に見守り育んできた。浩太が残した最大の遺産が人であることを示唆するエピソードだった。

　かすかな追い風を逃さずIWAKURAを浮上させるため、めぐみは懸命にきっかけを探る。土地と工場を売って借金を完済し、賃料を払ってこれまで通り工場を操業する。悠人（横山裕）の提案に半分乗ってマンション建設の代わりに会社を存続し、悠人には土地・建物のオーナーになってもらう仕組みだ。めぐみの決断は結城のことが念頭にあった。会社を成長させるには設計のできる人材が不可欠で、結城を雇い直すための財源を捻出するには、長期的に経営を軌道に乗せなくてはならない。悠人の提案はこの問題を解決に導くものだった。

　悠人はめぐみの意志を尊重する形で妥協したのだが、投資家としての冷静な判断があったことは間違いない。それでもめぐみを気づかったり、浩太の死に目に会えなかったことを非難されて傷つく悠人に家族想いの一面を見出すこともたしかだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作：桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽：富貴晴美
主題歌：back number 「アイラブユー」
制作統括：熊野律時、管原浩
プロデューサー：上杉忠嗣
演出：田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地：東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供＝NHK