『PICU』吉沢亮が体現した志子田の内なる成長 植野から学んだ希望が足元を照らす

 大地震による圭吾(柊木陽太)の補助人工心臓植え込み手術の延期、小児科に戻っていたものの病状が悪化した白血病患者・日菜(小吹奈合緖)の再受け入れ、さらには地震によるトンネル崩壊事故に巻き込まれたスキー旅行中の小学生の重症患者の搬送……これでもかというほど非常事態に見舞われ続けた『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)最終話。

 雪降る中、余震がいつ来るかもわからぬ状況下での救助活動に、PICU含めどんどん満床になる病院……全てのリソースが枯渇し、探さなくともそこら中に諦める理由はいくらでも溢れ返っている。そこで“しこちゃん先生”こと志子田(吉沢亮)が、医者として何ができるのか、何に向かって働いていけばいいのかという問いに自ら答えを出す。「僕は人の命を預かる医者なので、何もできなくても、たとえ目の前で命が失われるのを見ることになったとしても、それでも他に受け入れ先がないなら、僕はその瞬間まで何かしたいです。(中略)悪足掻きでも足掻いて足掻いて、どうにか命をこの世界に繋ぎ留めておきたい」。

 目の前の命の灯火を絶やさぬようにずっと動き続け働き続けるということは、自分が否応なしにその命に最期まで責任を持つということだ。第1話で「生きるとか死ぬとか無理だからさ。ホントそういうのダメだからさ」「子どもとか死んじゃったらマジでヤバイじゃん」と、とにかく“死の匂い”を頑なに遠ざけようとしていた者と同一人物とは思えぬほどの志子田の内なる成長ぶりが改めて頼もしく目を見張る。

 「神様はどうやっても俺に生きてほしくないんだ。もうちょっとってところで邪魔される。死んでほしいんだ、俺に」。圭吾がそんなふうに思わずにはいられなくなった時に、自分以上に自分の命を諦めないでいてくれる人がいる、その事実だけでどれだけありがたく救われる思いがするだろう。極寒の中、身動きが取れずもう助からないかもしれないと遠のく意識の中「大丈夫ですか?」という救助隊の声が聞こえるだけで、背中をさすってくれる手の温もりが伝わるだけでどれだけ心強く、心の底から安堵できるだろう。たとえ身体の痛みや状態がすぐには変わらずとも、真っ暗だったところから一気に引き上げてくれ、“希望”が見えるだろう。

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