『舞いあがれ!』福原遥の泣きの演技が心を打つ 不測の事態で証明された舞の“素質”

 帯広空港への着陸は諦め、一人で釧路空港に行くことになった舞(福原遥)。『舞いあがれ!』(NHK総合)第52話は、彼女の初のソロフライト中に起きた不測の事態を映す。

 冷や汗をかきながら燃料を確認する舞。今は問題ないが、もし釧路も風が強くて降りられなかったら。ただでさえ着陸の特訓をしていたせいで周りよりもフライトに遅れが出ていたのに、初めてのフライトで予測不可能な展開に見舞われてしまった。舞はこれまで冷静に状況を確認して対処できてきたが、柏木(目黒蓮)と違ってこういう時に自分に自信がない。そんな彼女の心を支えたのが、大河内教官(吉川晃司)。もし教官がもう少し若かったら、確実に恋愛フラグだろうというくらい、カッコいい登場の仕方だった。

 大河内教官の誘導のおかげで釧路空港まで到着した舞。これから意識を移さなければいけないのは着陸だ。普段から成功しないのに条件は最悪。いつもより強い風に、不慣れな場所。パニックになってもおかしくない状況なのに、彼女が今までのことを振り返って挑めたのは、「岩倉学生、自信を持て。落ち着いてやれば、できる」と力強く言ってくれる大河内教官の存在があったから。舞の目線の先には、滑走路しかなかった。

 風向きに合わせて、基軸を直して、沈みを感じたら引く。機体は見事センターラインに着陸し、そのまま線に沿って真っ直ぐ進んでいった。こんなにもこの光景が美しく思えるのは、何話にも舞がこの瞬間を何度も失敗してきた描写のおかげだ。ミスにおける変な癖は、すぐに治らない。頑張ったからできるわけでもない。大河内の「努力をしてもパイロットになれない学生はいる」という言葉を、舞は自身の努力を以てして間違っていると証明したかった。しかし、仮に水島(佐野弘樹)が今回の舞の立場に置かれていたとしたら、管制塔からの指示をしっかり聞いて対処することができただろうか。大河内が並走していたといえ、あの場を冷静に切り抜けられただろうか。機内に仲間と教官がいてもパニックになっていた水島、それに対して一人でも冷静になれた舞。皮肉ながら、舞の成功は水島との違いをより強調し、ある意味で大河内の言葉を体現したのだ。

 不足の事態は必ず起きる。それでも冷静にならなければいけないのが、パイロットの務め。トム・ハンクス主演の実話を基にした映画『ハドソン川の奇跡』をふと思い出す。今回のようなソロフライトはある意味自分の身だけが危険だが、舞の目指すようなパイロットは多くの乗客を乗せた上で、あのような事態に見舞われてしまうのである。もちろん、事故やテロのようなエクストリームな展開でなくても、今回のように悪天候が理由で到着する空港が急に変わるかもしれない。柏木が苦戦していた地理の把握も、そういう時のために欠かせない必要スキルだったことが、改めてわかるシークエンスとなった。

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