『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』北米V2 コロナ禍のMCUで最も優れた推移

 11月18日~20日の北米週末興行収入ランキングは、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が予想通りのV2を達成。3日間で6730万ドルを稼ぎ出し、早くも北米興収は2億8799万ドル、世界累計興収は5億4629万ドルという成績となった。

 現状、本作の興行収入は前作『ブラックパンサー』(2018年)に及びそうにない。なにしろ前作は公開後3日間で2億200万ドルを稼ぎ出したメガヒット作で、2週目も1億1165万ドル、前週比-44.7%という驚異的な強さを見せつけたのだ。スーパーヒーロー映画は1週目に多数のファンが集まる性質上、2週目の下落率は大きくなる傾向にある。過去30本存在するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画のうち、この数字が49%未満となったのは(『ブラックパンサー』を含む)わずか4本だけなのである。

 その点で言えば、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の2週目の成績は事前の予測値(7000万ドル)よりも低く、また前週比も-62.9%とやや大きめの――そしてスーパーヒーロー映画の傾向とたがわぬ――結果となった。Deadlineによると、その要因には、やはり2時間41分という上映時間があるらしい。

 もっとも本作の下落率が、コロナ禍のMCU映画としては最も優れた数字であることも事実。2週目の下落率が60%を超えた作品は全30本中10本に及ぶが、上位5作品(ワースト5作品である)はすべてコロナ禍に公開されている。ディズニープラスで同時配信された『ブラック・ウィドウ』(2021年)の67.8%、『ソー:ラブ&サンダー』(2022年)の67.7%、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)の67.5%、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)の67.1%、そして本作の62.9%だ。

 ひとまず『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の興行的真価は、3週目の結果を見てから判断しても良さそうだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%・観客スコア95%という高評価をキープしており、口コミ効果が(長めの上映時間ゆえに)遅れて出てくることも考えられる。

 第2位に初登場したのは、日本でも11月18日に同時公開されたサーチライト・ピクチャーズの最新作『ザ・メニュー』。名優レイフ・ファインズと今をときめくアニャ・テイラー=ジョイの共演によるグルメスリラーであり、アダム・マッケイ監督がプロデュースした風刺性の色濃いブラックコメディだ。サーチライト史上最大規模となった3211館で公開され、3日間で900万ドルを稼ぎ出した。

 マーク・マイロッド監督をはじめ、脚本・製作陣にHBOの人気ドラマ『メディア王 〜華麗なる一族〜』(2018年~)の顔ぶれが揃った本作は、緻密に練り上げられた作劇と演出に評価が寄せられており、Rotten Tomatoesでは批評家スコア90%を記録。しかし観客からの支持はもう一歩で、同じくRotten Tomatoesでは79%、劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B」評価となった。製作費は3000万ドル、今後の推移はどうなるか。

 コロナ禍以降のハリウッドでは、批評家の反応が興行に結びつかない傾向がより顕著になってきた。今年の映画賞レースを賑わせている『イニシェリン島の精霊』や『Till(原題)』『Triangle of Sadness(原題)』『Tár(原題)』などは、いずれも大人向けの、完成度の高い作品群だが、興行的にはもうひとつ存在感を示せずにいる。

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