『チェンソーマン』早川アキを愛さずにはいられない理由 これから訪れる“地獄”の前に

 物語が進めば進むほど、視聴者や読者を阿鼻叫喚の渦に陥れることに定評のある『チェンソーマン』。美麗な作画と、毎回違ったエンディングテーマが用意されているという贅沢すぎるアニメも第6話まで放送済みだ。押しも押されぬ注目作であり、個性豊かで魅力的なキャラクター揃いの『チェンソーマン』の中でも、特に高い人気を誇るのが、早川アキだ。

『チェンソーマン』第2話「東京到着」予告 / CHAINSAW MAN Preview

 公安対魔特異4課所属のデビルハンターで、デンジの先輩であるアキ。5分で約120万人を殺したという「銃の悪魔」に目の前で家族を殺されたアキは、銃の悪魔を殺すという確固たる覚悟を持って危険な公安になった人物だ。当然、悪魔全般を憎んでおり、悪魔はなるべく苦しむように殺したい思っている。そんなアキにとって、ポチタだけを唯一の友達として生きてきて、「友達になれる悪魔がいるならなりてえよ」とのたまうデンジは、まったく相容れない真逆の価値観の持ち主だ。

 アキはチンピラのようなふるまいをし、マキマへの下心で公安になったデンジを信用せず、出会って早々に路地裏で殴りつけて「仕事やめろ」と言い捨てる。それに対し、公安になって初めて人並みの生活を手に入れたデンジは憤慨し、アキに対して集中して金的を食らわしノックアウトするという、最悪の相性で関係をスタートさせることになる。

 「銃の悪魔」を倒すための人材として、やむを得ずデンジを受け入れるアキ。対魔特異4課の面々がホテルに閉じ込められ、「永遠の悪魔」からデンジの心臓を差し出すように迫られた時。追い詰められたメンバーの東山コベニがデンジを刺すそうとするのを、アキは身を挺して守る。それを目の当たりにしたデンジは、自ら永遠の悪魔の口に飛び込んでいく。そうやって互いに体を張ることで、正反対の2人は少しずつ信頼を積み上げていく。

 アキとデンジが相容れないのは、仕事へのスタンスだけではない。デンジを見張るためという名目で一緒に暮らすことになったアキは、その破天荒さにさらに驚愕することになる。食卓をべたべたに汚しながら食パンにてんこ盛りにジャムを塗り、大声で歌いながら長風呂する。借金返済のために幼少期から働きづめで義務教育も受けておらず、悪魔や魔人に関する最低限の知識もない。そのあまりの常識のなさに、アキは何度も絶句させられる。

 幸せな家庭に育ち、それを悪魔に奪われ、復讐に燃えるアキ。何一つ与えられない世界で這いつくばるように生きてきて、食パンに好きなだけジャムを塗れる現在に幸福を覚えるデンジ。辿ってきた人生も正反対の2人だ。

 そこへ、デンジに輪をかけて常識のない魔人・パワーも同居生活に加わり、アキは獣を調教するがごとき生活を与儀なくされる。野良の犬猫レベルでルールが通じないデンジとパワーに対し、アキはガムで釣って躾けようとしたり、「お前らに人権はない」と言い放ったりと、3人の生活はまるで動物園か幼稚園のようだ。だがその日々は、最底辺で生きてきたデンジに「普通の生活」を、猫以外信じずに生きてきたパワーに人間への信頼を、家族を奪われたアキに疑似的な家族を、意図せぬうちに与えていくことになる。

 早川アキという人物を語るに、もう一人欠かせない人物がいる。それが姫野先輩だ。

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