橋本愛と考える、日本映画界を変えていくためにできること “世界”を見渡して意識改革を

「少しずつ誰かの意識が変わっていって、業界自体も変わってくれたら」

ーー問題が山積みの日本映画界ですが、昨年は濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した明るい話題もありました。一方で、『ドライブ・マイ・カー』のように海外で注目されるような作品がなかなか出てきにくいという課題もあるように感じます。

橋本:勝手な想像ですが、作り手側も、世界を見越して作っている人自体がもしかしたら少ないのかもしれません。私自身も、映画の現場に行ったときに、「世界を感じるな」という作品と、「これはいまの日本の人たちに向けたものだな」と感じる作品、異なる肌感覚が確かにあります。私自身も含めてですが、日本はやっぱり閉鎖的な空気感がものすごく強いので、何においてもスピードが遅いなと感じてしまうところがあるんですよね。だからこそ、東京国際映画祭という毎年必ず訪れてくれるありがたい機会に、私がそう思えたように、一度世界を見渡してみて、少しずつ誰かの意識が変わっていって、業界自体も変わってくれたらいいなと願っています。

ーー確かに少しずつ、一歩ずつというのが大事かもしれません。

橋本:そうだと思います。いまはやっぱり過渡期ということもあって、いろんな立場の人がいる混沌とした状況なので、ちゃんと意識を持った人たちが、それぞれのスピードで徐々に変わっていければ、数年後、数十年後にはすごくいい状況になるのではないかなと思っています。

ーー最後に、映画についても聞かせてください。昨年は映画祭で“観客”として楽しめた作品はありましたか?

橋本:それが撮影と被ってしまってスケジュールがまったく合わず、全然観ることができなかったんです。今年も怪しげではありますが、青山真治監督の『ユリイカ』と『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』は観に行きたいなと思っています。

ーーちなみに最近観て面白いと思った映画はなんですか?

橋本:それが最近は映画自体も全然観れていなくて……。撮影で忙しかったというのもあるのですが、いまはちょうど音楽と読書にハマっていて、自分の中にいろいろ詰め込んでいるところなんです。また見え方が変わってくると思うので、いろいろ蓄えた上で、また映画を観に行きたいなと思っています。

ーー橋本さんにとって、“映画”とはどういう存在かを教えてください。

橋本:いまの時代、ほとんどのことにおいて、自分自身で選ぶことが主流になってきていて、時間も“あるもの”ではなく“作るもの”になっていると思うんです。だけど映画って、何時にどこでこの映画を上映しますというように、主導権が向こう側にあると思っていて。配信などで家で観る場合はまた別ですが、自分が映画館という場所に向かっていくという感覚が、いまの時代と逆行しているなと感じつつも、いましかやっていない作品を迎えにいくようなかたちこそが、“出会い”になり得るのではないかなと。お互いが合流する場所があることは、とても素晴らしいことだなと感じます。それと、これは過去の自分に重なることではあるのですが、映画館って、どこにも行くところがない人たちの場所だと私は思っているんです。いまの時代、お祭りのように楽しむ方々もたくさんいらっしゃるので、そういう方々とそうでない真逆の境遇にいる人たちが同じ空間で同居していることにも、芸術の多様性、器の大きさをすごく感じるので、そういう“映画の可能性”についても、微力ながら広めていければと思っています。

■開催概要
「第35回東京国際映画祭」
会期:10月24日(月)~11月2日(水)
会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアの各映画館やホールなど
主催:公益財団法人ユニジャパン
公式サイト:www.tiff-jp.net

「TIFFCOM2022」
10月25日(火)~27日(木)(※オンライン開催)
公式サイト:www.tiffcom.jp

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