『ポプテピピック』が日本アニメの可能性を広げる? 恐るべきバランス感覚に注目

 『ポプテピピック』は大川ぶくぶの漫画作品を原作とした作品で、2018年にTVシリーズの第1期が放送され大きな話題を呼び、第2期が10月より放送開始となった。主人公のポプ子とピピ美による不条理としか言いようがない、理解が難しいギャグや、アニメや漫画業界の、いわゆる大人の事情に踏み込んだ時事ネタなどが展開されている。

 今作はその不条理で理解不能なギャグ描写の数々ゆえに、ファンのみならず、制作者すらも認める「クソアニメ(漫画)」と呼ばれている。作者の大川ぶくぶはYouTube番組『わしゃがなTV』内でも、1番つまらないと思う作品に本作を挙げている。

【Wikipedia】わしらの経歴まちがいだらけ!?【修正希望】

 もちろん、バラエティ番組で笑いを狙った冗談ではあるものの、そのような扱いを受けても問題ない作品という認識がファンだけでなく、作者にもあるという事例だろう。

 しかし本作はネットミームとして「クソアニメ」の称号を得ているが、本当にクソと呼ばれる不出来な作品かと問われると、答えはNoだ。むしろ、今のアニメ作品ではできないような挑戦的な手法が多く試みられており、ギャグに笑いながらも、思わず真剣に見入ってしまう映像表現が多くある作品である。

 まず話題になったのは30分アニメでありながらも、15分で1話が終わってしまうという構成だ。これは後半の15分では全く同じ映像を使い回しており、物語やギャグもほぼ変化しない。同じ映像を同じ放送回で2度流すという、真面目に考えれば言語道断の行いができるのも、不条理ギャグの本作ゆえだろう。

 だが、2回目に放送される後半のパートは前半パートで演じた声優が変更されていることが、大きな話題を呼んだ。例えば2期第1話のAパートでは、平野綾と茅原実里が共演しているが、これは『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒロインと人気キャラクターを演じた2人を起用した形だ。Bパートでは後半は『銀河英雄伝説』や『ガンダム』シリーズなど多くの作品で共演している井上和彦、堀川りょうが務めた。このように、各声優が以前に共演した人気キャラクターを連想させるなど、メタ的な関係性を重視しており、多くの声優ファンが歓喜した。

 それと同時に声優がほぼ同じ台本で、振り幅が大きいコメディの芝居をしてもいい、という場を与えられた際に、どのような演技プランを提示するのか、という実験でもある。アニメのオーディションでは、1人のキャラクターを多くの声優が演じる。その際にキャラクターや感情の解釈の違いにより、細かな差異が生まれてくる。またアフレコシーンのメイキング映像を拝見しても、わずかな感情の変化や言い回しの違いにより、作品全体のニュアンスが異なってくることが窺える。

 これらの場面は一般にはなかなか鑑賞する機会がないが、本作は疑似体験することができるだろう。それはその声優の演技プランの豊富さのみならず、ラジオなどバラエティ番組でも活躍する声優の場合、フリートーク用の鉄板ネタを持ち褪せている場合もあり、それをアドリブで披露し笑いをとる。あるいは、第2期第2話の朴璐美と釘宮理恵の『鋼の錬金術師』のメインキャストコンビの息のあった掛け合いや、普段の様子が窺えるようなやりとりを垣間見せることで、その声優コンビだからこその味わいや、アフレコ外の雰囲気を伺うことができる。

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