『石子と羽男』脚本・西田征史だからこそのキャラクター設計 『タイバニ』との共通項も

 ついに最終回を迎える『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)。各話ごとに今、現実の社会で問題となっている小さな(しかし、かなり日常に密接している)イシューを取り上げるリーガルドラマとしての新鮮さがあった。ファスト映画問題に、会社のいじめやパワハラ、電動キックボード事故に、育児問題……。

 これまでのリーガルドラマの多くでは、企業の汚職、飲酒運転や窃盗、殺人事件など大きなスケールの刑事事件が多く取り上げられてきた印象が強い。そのため、弁護士の主人公はどこか“ヒーロー”的な存在として被害者を救ってきた。しかし、『石子と羽男』は、もっと多くの人が地味に気になっていたり、頭を悩ませていたりする日常と地続きになっている事案を取り上げる形になっているので、より自分自身や周囲の人間に起きそうな身近な出来事として物語を捉えることができたのだ。

 副題の「そんなコトで訴えます?」が示すように、知らないと誰もが裁判沙汰に巻き込まれてしまうようなケースを、親近感を持たせて描くことで視聴者への警鐘になること、そしてそれ以上にケースの背後にある社会問題に切り込む作風が本作の味噌と言えるだろう。だから、主役が市民の生活に寄り添う「町の弁護士(町弁)」であることが重要なのだ。石子こと石田硝子(有村架純)と羽根岡佳男(中村倫也)のコンビにも、これまでのリーガル作品と比べて新鮮さを感じる。それこそ、羽根岡が演じようとしていた「天才弁護士像」がいわゆる“あるある”なのに対し、第1話からそういった像を石田がツッコミにツッコんでメタ的にバッサリ切り捨てているのが面白い。

 そう、羽根岡は確かにピクチャー・メモリーという天才的な才能や素質を持っているものの、実はかなり自信がない。一方、石子はコツコツと努力してきた能力とそれにともなって生まれた自信で彼を補っていく。(男性の)弁護士キャラが“天才”で、それに振り回される(女性)パラリーガルという、どこかで見たことがあるような“お決まり”構図を一新し、本作が本当の意味で「持ちつ持たれつ」のバディを生み出したことを(そして、この男女コンビを一切恋愛関係に発展させなかった点も)高く評価したい。

 この二人のバディ関係や作品のテーマ性は、やはりどこか本作の脚本を手がけた西田征史がシリーズ構成・脚本を務めたアニメ『TIGER & BUNNY』(以下、『タイバニ』)を彷彿とさせる。『タイバニ』も、ヒーローとして活躍する特殊能力者のチームの日々を描きながら、一般市民と変わらない悩みを抱えていたり、弱みを持っていたりと、ヒーローを等身大的で人間くさいキャラクターとして描いた点が魅力的な作品である。何より、シリーズの顔とも言えるワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹と、バニーことバーナビー・ブルックスJr.のバディは、『石子と羽男』に通じる点がいくつもある。

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