『ユニコーンに乗って』が目指した“心の癒し” プロデューサーの松本友香&岩崎愛奈が語る

 永野芽郁が主演を務めるTBS系火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』が9月6日に最終回を迎える。

 教育系スタートアップ企業の若き女性CEO・佐奈(永野芽郁)のもとに、おじさんサラリーマン・小鳥(西島秀俊)が部下として転職してきたことで、仕事に恋に奮闘しながら、夢に向かって真っすぐ生きる主人公たちの成長を描いてきた本作。

 第9話では、念願の世界進出へ向けて動き出すことを決めた矢先にビジネスパートナーだった須崎(杉野遥亮)が会社を去ることを決断。佐奈と須崎はそれぞれ自分の夢に向かって別の道を歩き始めることに。

 今回、リアルサウンド映画部では同じTBS系火曜10時枠で放送されていた火曜ドラマ『家政夫のナギサさん』以来のタッグとなるプロデューサーの松本友香と岩崎愛奈にインタビュー。本作で目指した“キュンキュンなラブ”だけではない心の癒し、最終回で描く“愛の形”について話を聞いた。(編集部)

重要視した“私にもできるかも”という感覚

――本作に込めたメッセージと、制作に至るまでの経緯を教えてください。

松本友香(以下、松本):何歳でもチャレンジしていいし、何か新しいことをやりたいと思ったら、自分の立場や状況とかに関係なく、まず一歩踏み出してみたら景色が変わるかもしれない。そのチャレンジを応援したい、という気持ちで作っているドラマです。海外では続々とユニコーン企業が生まれている中で、日本は“新しいこと”を始めることにすごく抵抗が強い精神風土だなと。その勇気を周りが認められなかったり、ちょっと変わり者扱いしたりするような風潮がある中で、誰かの新しいチャレンジを素直に応援できるような文化が生まれたらいいな、というところから企画を思いつきました。あとは、女性社長がスーパーバリキャリとして描かれるドラマが多い中で、「実は私も起業できるかもしれない」と思えるような等身大のCEOがいてもいいなって。“同じ目線”とか“私にもできるかも”という感覚は、すごく重要視していた部分です。

――制作過程で大変だったことはありますか?

松本:今も大変だなと思っているんですけど(笑)、みんなが思っていることと、ちょうど同じラインに立つ方がいいのか、ちょっと先のメッセージを投じた方がいいのか。先を行き過ぎると「そうじゃない」と思う人もいるし、手前だと「もうその動きはあるよね」となってしまうので、世の中のラインと物語のラインをどう揃えるかが難しかったです。ようやく日本でも、国がスタートアップ企業を応援していくような動きがあるので、そういった空気とドラマの空気が合えばいいなと思いました。

岩崎愛奈(以下、岩崎):私は“リアリティ”と、夢を抱けるような“ドリーム感”のバランスが難しいなと思いました。変に難しくしすぎて「やっぱり起業って難しいじゃん」と思われるのも寂しいけれど、あまり軽快に進みすぎると「そんなに簡単なものではない」と思われてしまう。もちろん、努力や真っ直ぐな気持ちも必要だよ、ということをしっかり描いていきたかったので、そこはしっかり主人公に担ってもらいましたが、主人公の姿勢、仲間たちの支え合い、といったバランスがすごく難しかったです。

――ドラマにはデジタルに関する難しい用語が出てきますが、小鳥さんがいることで視聴者にもわかりやすく伝わっているように感じます。

松本:クランクインの半年くらい前からいろんなスタートアップ企業に取材に行ったんですけど、カタカナ用語がすごく多くて、自分たちも小鳥さんと同じ感覚だと思うことが多々あって。そういうところを物語の中にうまく入れつつ、視聴者と同じ目線に立って質問してくれる人がいたらいいなと思っていました。なので、小鳥さんがその役割を担っていると言ってくださってよかったです。

――小鳥さんと佐奈を引き合わせたのが、アナログな図書館というのも印象深いです。

松本:本とかもスマホで見てしまうくらいデジタルが進む一方で、アナログも大切なものだと思っています。それに、図書館は建築にこだわっているところが多いので、シチュエーションを含め、監督とも「美しい建築の図書館で撮影してみたいね」と、ビジュアルイメージから入った部分もありました。

――ドラマを制作する上で、参考にした作品はありますか?

松本:(ネットに)いろいろと書かれていますけど(笑)、やっぱり『マイ・インターン』と『スタートアップ:夢の扉』は観てましたし、とても好きな作品です。もちろん意識したところはありますし、それを今の日本の状況に落とし込むとどうなるのか、そこにドリーム感を掛け合わせるとどうなるのか、と。ただ、一番意識したのはリアルな人たちの声です。5社にがっつり取材をして、ビジコンではこれから起業する人たちの意見を聞いたりもして。その人たちのエピソードを物語に使ってることがすごく多いです。

――スタートアップ企業を描いたことで、どんな手応えがありましたか?

松本:ドラマに関わってもらったスタートアップ企業の方々は発信力がある方ばかりで、その方たちのおかげでIT業界やスタートアップ業界の人たちがすごく観てくれているなと感じます。あとはTVerのリアルタイム配信で、全番組中1位を3週連続で取ったりもしているんです。テレビを持たない若者が増えている中で、普段テレビを観ない層が多く観てくれているんだろうなと分析しています。

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