“山﨑賢人×ゲーム業界”で日曜劇場に新風を吹かせる? 『アトムの童』への期待

 日曜劇場は1956年にスタートした老舗のドラマ枠で、当初は単発ドラマを放送する枠だった。1993年にリニューアルして以降は連続ドラマを放送するようになり『課長サンの厄年』や『サラリーマン金太郎』といったサラリーマンの男性を主人公にしたドラマが、1990年代には多く作られた

 2000年代に入ると松本清張原作の『砂の器』や、山崎豊子原作の『華麗なる一族』といった昭和の名作小説をドラマ化するようになる。そして2010年代は『半沢直樹』を筆頭とする池井戸潤の企業小説が多数ドラマ化された。そのため、NHKの大河ドラマと並ぶ、中年男性に愛される大人向けのドラマ枠という印象が強いのだが、クラシカルで万人が楽しめるわかりやすさを死守した上で、新しい素材をその都度盛り込んできたからこそ、日曜劇場の人気は保たれてきた。

 それは出演俳優に強く現れている。『砂の器』では中居正広、『華麗なる一族』では木村拓哉という国民的アイドルグループSMAPの2人が主演を務め、『半沢直樹』では演技力に定評のある人気俳優だった堺雅人が主演に起用された。

 香川照之、阿部寛といったベテラン俳優が多数出演し、水を得た魚のように活き活きとした芝居を見せる池井戸潤ドラマの印象が強いため、中年男性が主人公の熱血お仕事ドラマという印象が強い日曜劇場だが、主演俳優の起用は大胆かつ的確だ。

 アイドル的な評価を受けていた若手俳優が、30代から40代の中年男性へと成熟していく中で、新しいイメージを打ち出すための舞台となっている。最近では『マイファミリー』が、国民的アイドルグループ嵐のメンバーだった二宮和也が傲慢な父親を演じることで、大人の俳優としての一歩踏み出す作品となっていた。二宮の他にも2020年代の日曜劇場を見ていくと、『TOKYO MER~走る緊急救命室〜』の鈴木亮平、『日本沈没ー希望のひとー』の小栗旬、『オールドルーキー』の綾野剛といった、2000年代から10年代に若手人気俳優として頭角を現した、現在アラフォーの俳優が多く起用されている。

 彼らと比べると『アトムの童』の山﨑賢人と『テセウスの船』の竹内涼真は20代後半だ。日曜劇場の主演を務める俳優としてはまだ若手だが、2人は過去に『陸王』に出演しているため、TBSとしては10年後、20年後を見据えて、日曜劇場を支える大人の俳優として育てていきたいのかもしれない。老舗の看板を守りながら、ゲーム業界と山﨑賢人という新しい要素を取り入れる『アトムの童』は、これからの日曜劇場に何をもたらすのか。10月が待ち遠しい。

■放送情報
日曜劇場『アトムの童』
TBS系にて、10月スタート 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
製作著作:TBS
©︎TBS

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