『ハリー・ポッター』『ストレンジャー・シングス』から考える、子役作品シリーズ化の課題

 Netflixの大人気シリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン4 Vol.2が配信され、話題を呼んでいる。今シーズンは各話1時間超えの大ボリューム、さらに1シーズンがVol.1とVol.2に分けられており、Vol.2の配信スタートをファンは首を長くして待っていたことだろう。長くつづくシリーズのなかで、シーズン1では12歳の設定だったキャラクターたちもいまや高校生となり、成長した姿を見せている。彼らは子どもながらに、ときには子どもだからこそできる発想と行動力で“裏側の世界”と戦ってきた。『ストレンジャー・シングス』開始当初の魅力の1つは、こうした“子どもたち”の存在にあったといっても過言ではない。しかし『ストレンジャー・シングス』はシーズン5で終了することが決定しており、物語がどんな結末を迎えるのか期待するのと同時に、彼らとの別れに寂しさを感じる視聴者も少なくないのではないだろうか。

 これまでにも少年少女の冒険譚や成長譚は、子役の魅力がシリーズの人気の鍵を握っていた。しかしこれらのシリーズは、いくらストーリーが面白くともキャストの成長にともなって、子役の魅力に頼って永遠につづけることは不可能だ。ここでは、子どもを主人公に据えた人気作品のシリーズ化の難しさと、これまでその難題に対してどのような対策が講じられてきたかを見てみよう。

“子ども”でなくなることと“最終目的”を果たすこと

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン1

 先ほども触れた『ストレンジャー・シングス』や『ハリー・ポッター』シリーズでは、キャストの成長に伴ってキャラクターも成長していった。キャストが歳を重ねれば、キャラクターも進級し、進学し、やがて学校を、そして作品を卒業する。こうした作品の見どころの1つは、シリーズ開始当初はあどけない子どもだったキャラクターやキャストの成長を見守ることにもあるのではないだろうか。シリーズが進むに従ってストーリーは壮大になり、彼らが立ち向かう困難も大きくなっていく。それに立派に対処する姿を目にすると「あんなに小さかった子が……」と、まるで親か親戚のような感慨深さを感じることもあるだろう。一方で、キャラクターたちと同世代の観客は、同じ冒険をともにした仲間や同級生のように感じられることもあるはずだ。すでに完結している『ハリー・ポッター』シリーズでは、長い時間をかけて張り巡らされた伏線が回収され、キャラクターたちの成長に胸を打たれるシーンも多かった。特にこれまで“ドジっ子”ポジションにいたはずのネビル(マシュー・ルイス)が、最後のホグワーツでの戦いで鍵を握り、勇姿を見せたシーンは、彼の成長を考えると感動もひとしおだった。

 同じく『ストレンジャー・シングス』もシリーズが進むしたがってストーリーは壮大になり、いまや“裏側の世界”の真実に迫ろうとしている。キャラクターたちもこれまで以上の困難にぶつかり、そして一方で置き去りにしてきた問題に否応なく向き合わざるをえなくなってきた。これはキャラクターたちがキャストと同様に大人になりつつあるからこそできることで、いつまでもかわいい12歳の少年少女のままでは、こうした展開は期待できないだろう。キャラクターたちが成長するからこそ、その連続性で物語は面白さと深みを増す。もちろんこれは、同じキャストが同じキャラクターを演じつづけることでしか実現できない。そして『ハリー・ポッター』であれば「ヴォルデモートを倒す」、『ストレンジャー・シングス』であれば「“裏側の世界”の謎を暴き、ホーキンスの町の悲劇の元凶を断つ」という最終目的に向かって彼らは進んでいく。この最終目的が達成されたときに、物語は終わるのだ。それ以上シリーズをつづけようとしても、蛇足にしかならない。

 では物語に最終目的がなく、ただ続いていく日常を描くシリーズはどこに着地するのだろうか。1987年から1995年にかけて放送されたシットコム『フルハウス』は、妻を亡くした男が義弟、親友と協力して3人の娘を育てる物語だ。第1シーズン開始時点では長女のD.J.(キャンディス・キャメロン・ブレ)が10歳、次女のステフ(ジョディ・スウィーティン)が5歳、末っ子のミシェル(アシュレー・フラー・オルセンおよびメアリー=ケイト・オルセン)は生後9カ月の設定だった。キャストとともにキャラクターたちも成長し、ティーンエイジャーになったころには、彼女たちを取り巻く社会問題も取り扱うエピソードが話題になった。そんな『フルハウス』の実質的な最終回では、18歳になったD.J.のプロムが描かれている。そもそもアメリカのシットコムは、視聴率によって次シーズンの更新が決定されるため、明確な最終回としてエピソードが製作されることは少ない。それでも3姉妹の成長の物語として、アメリカ人にとって人生の大きな一区切りであるプロムで最終回を迎えたことは切りが良く、正しい判断だったといえるだろう。一部の出演者が降板を希望したこともあるが、やはりここでも、キャラクターおよびキャストが“子ども”ではなくなったことでシリーズは終了した。

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