執念の大切さを学んだのは『スカーレット』（2019年）だ。こちらは、女性陶芸家・川原喜美子（戸田恵梨香）が、自分のため、大切な人のために土と炎と向き合う物語である。

　彼女は陶器「自然釉」を完成させるべく、穴窯を造った。それまで家族のことも大切にしてきた喜美子だったが、どんどんとものづくりに没頭していく……。何度も失敗を繰り返す中、夫の八郎（松下洸平）ともすれ違い、借金までするように。「自然釉」と向き合う彼女は、“それまで”の喜美子とは違った狂気に満ちた目をしており、誰も止めることができなかった。

　穴窯の壁が崩れて炎が噴き出した際には、火を消そうとする母・マツ（富田靖子）を止め「水より薪や。もっと燃やす。もっともっと火をたくんや！」と薪をくべた。結果的にこの行動が功を奏し「自然釉」は完成。すべてを投げうって作った「自然釉」を眺める喜美子の涙と達成感あふれる表情は、今でも忘れられない。

　長年、同じ仕事をしていると情熱を失いかけることもある。そんなときは喜美子を思い出してほしい。すべてをマネする必要はないが、彼女の執念は学ぶべきところがある。喜美子の執念の一欠片でも参考にして仕事に取り組めば、成功しても失敗しても何かしら得られるものがあるはずなのだ。

　近年、働き方が多様化し、“仕事への取り組み方”は人それぞれになった。働き方に正解なんてないのかもしれない。しかし、歴代ヒロインを見ていると、仕事の面白さを再認識できるし、もっと成長したいと思える。

　現実世界はそううまくいかないのは分かっている。彼女たちみたいにできないから苦労する……が、理想を追い求めたっていいではないか。

 ■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演：黒島結菜
作：羽原大介
語り：ジョン・カビラ
沖縄ことば指導：藤木勇人
フードコーディネート：吉岡秀治、吉岡知子
制作統括：小林大児、藤並英樹
プロデューサー：松田恭典
展開プロデューサー：川口俊介
演出：木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供＝NHK