“推し”を大事にする日本には合わない? 『チップとデールの大作戦』の賛否両論を分析
日本人には受け入れ難いブラックジョーク満載の本作だが、アニメ『ピーター・パン』とドリスコールの顛末に加え、日本のディズニーファンが否定的な意見を今作に述べているのは別のところにもあると考えられる。本作と引き合いに出されている『シュガーラッシュ:オンライン』は、2018年の公開までに登場した過去のディズニープリンセスが一同に会するシーンが賛否を巻き起こしている。『トイ・ストーリー4』では、主人公のウッディがアイデンティティをなくし、最終的に苦楽を共にしてきたおもちゃの仲間たちと別れてしまうという展開が、主に賛否を巻き起こした印象だ。
アメリカでは本作をはじめ『シュガーラッシュ:オンライン』、『トイ・ストーリー4』共に高評価を獲得しており、キャラクターが辿る顛末を含め好意的に受け入れられている。アメリカは文化として個人主義が根強く、他者の選択や決断を重視する傾向があるように思う。一方、日本は協調性が重視されがちであり、またキャラクターに対する愛や理想が非常に強いのではないかと思う。『シュガーラッシュ:オンライン』や『トイ・ストーリー4』でも、それまで描かれたキャラクター象から逸脱する描写があるため、それらを受け入れられないファンがいるのではないだろうか。
日本には“推し”という概念があり、キャラクターに対する理想や愛を存分に発揮する文化がある。またキャラクターへの共感力も相まって、理想とするキャラクター象を自身の中に作り上げる傾向があるように思う。それは作品やキャラクター造形そのものが優れているからこその現象だが、同時にアメリカという文化の根底が違うエンタメ作品においては、仇となってしまうのかもしれない。
参照
https://m.imdb.com/name/nm0237985/bio?ref_=m_mn_ov_bio
https://ew.com/oscars/2019/01/22/bobby-driscoll-former-disney-star-oscar-winner/
■配信情報
『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』
ディズニープラスにて独占配信中
監督:アキヴァ・シェイファー
プロデューサー:トッド・リーバーマン、デヴィッド・ホバーマン
出演:ジョン・ムレイニー、アンディ・サムバーグ、セス・ローゲン、J・K・シモンズ
原題:Chip & Dale: Rescue Rangers
(c)2022 Disney