『マイファミリー』飯田和孝Pに聞く作品作りの裏側 「役者の表情に嘘はない」

温人と葛城の重なりを見せたかった

――第9話の葛城演じる玉木さん、二宮さんの留置場でのシーンもすごく印象的でした。「仕事が生きがい」と話したときに、視聴者はみんな第1話の温人を思い出してハッとしたのではないかと。

飯田:温人は、1年前までの自分を今、悔いて生きている。葛城は葛城で、5年前に心春ちゃんを助けられなかったことを悔いている。そのあたりの重なりを見せたかったというのもありますし、温人には“ないがしろにしてしまった家族”がいる、かたや葛城には“救えなかった家族”がいる。そんなふうに、すべてが“家族”に紐付けられればいいなと思っていました。

――おふたりのやりとりに裏話はありますか?

飯田:あのシーンは、これといった会話もなく普通に入っていきましたね。なんかもう、2人の中で「このシーンはこういう感じだ」と思い描いてるものが一致してるというか。先程もお話ししたように、「自分をどう見せるか」ではなくて、この葛城はこうです、この温人はこうです、だからこのシーンではこれが伝わればいいですよね、ということがすべてで。セリフには「あなたのエゴですよね」という言葉がありましたけど、キャストにエゴはないんです。すごく印象的なシーンになりましたが、撮影に関してはすんなりと、日常感がありました。

――玉木さんと共演シーンの多かった梅木役の那須雄登さんについては、成長を感じられることも?

飯田:那須くんは本当に成長したと思います。7日にクランクアップしたときに、「1話と比べて別人になったね」と話したら、「自分でも1話を観て恥ずかしくなりました」って(笑)。今回は上手な方々がすごくたくさんいて、そういった人からとにかく吸収して。那須くんは頭がいいので、たぶん客観的に自分を見れるんですよね。だから、最初のほうは「こう直そう」とまでは思えるけど、それがうまく表現に結びつけられなかった。でも、だんだんと自分が思うものに近づいて、回を追うごとに梅木の芝居はすごくよくなったし、ちゃんとフィットするようになってきたと思います。

――この段階で第1話から見返してみると、温人は本当に雰囲気が違いますよね。

飯田:だんだん父親になってきているんだと思います。衣装合わせの時から、二宮さんも「“家族がいる1人の男が、もう1回父に戻る”というところに向かってやっていきたいですよね」とお話をされていたので、ご自身で計算をして徐々に自分からトゲを抜いていったのかもしれません。まず3話で娘が助かって、「絶対にこの子を守らなきゃいけない」と言ったところから1年が経って、やっぱり仕事も大事だし、と。でも、そこから他の子どもが誘拐されたことで、自ら率先して動いて、(家族は)尊いものだと感じるようになっていく。そうやって“父に戻る温人”を表現するために逆算してきたことが、おそらく印象の変化につながっているんだと思います。

――ひとつ、気になったのがスマホの着信音。嫌な思い出のある着信音を温人も変えず、三輪も、葛城も同じなの? と。

飯田:それは単純に、そっちの方が面白いだろうなって(笑)。このドラマはすごくシリアスだし、観てる人もどんよりとしがちなので、「みんな同じ着信音なの!?」とツッコむ余地を残すというか。世界観の統一もあるし、ちょっとずるいんですけど、それによって視聴者がいろいろと考えてくれたりもする。でも、たまたま着信音が同じ場合って実際にあるじゃないですか。だから、ドラマの中でもそれが起こっている感じですね。

――この作品は世界配信されるということで、海外からの反応も気になります。

飯田:翻訳作業があるので、まだ配信はスタートしていなくて。でも、二宮さんは「吹替版で誰が自分の声をやるのか知りたい」と言ってました。視聴者の方も、どんな声になるのか想像してみるのも面白いんじゃないかなと思います。

――では、あらためて最終回の見どころをお願いします。

飯田:大きくは2つだと思います。まずひとつは、真犯人は誰だ。それに付随して、なぜそういうことになったのか、ということ。もうひとつは、それぞれの家族の未来、人物たちの結末ですね。真犯人は当然わかるんですけど、その理由に「人間だね」「家族なんだね」という納得感があるといいなと思っていて。基本的に、このドラマはスケールの大きい話ではなくて、すごく小さな話。“人間同士のもつれ”とか、Uruさんの主題歌のように“ボタンの掛け違い”とか、そういったことがすべて込められた最終回になっているかなと思っています。

※記事初出時、一部記述に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

■放送情報
日曜劇場『マイファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:二宮和也、多部未華子、賀来賢人、高橋メアリージュン、大友康平、神野三鈴、迫田孝也、那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)、山田キヌヲ、 渡辺邦斗、藤間爽子、大島美優、凛美、山崎莉里那、松本幸四郎、富澤たけし(サンドウィッチマン)、蓮佛美沙子、森脇英理子、珠城りょう、濱田岳、玉木宏
脚本:黒岩勉
演出:平野俊一
プロデューサー:飯田和孝、渡辺良介(大映テレビ)
スーパーバイジングプロデューサー:那須田淳
協力プロデューサー:大形美佑葵
製作著作:TBS
(c)TBS

関連記事