シェイクスピア原案のアニメ『薔薇王の葬列』 常識も予想も全て覆す新解釈に目が離せない

 2022年1月よりTOKYO MXほかにて放送中のアニメ『薔薇王の葬列』。本作は、シェイクスピアの史劇『ヘンリー六世』『リチャード三世』を原案とした、菅野文による原作をアニメ化したダークファンタジーだ。白薔薇のヨーク、赤薔薇のランカスターの2つの勢力がいがみ合う「薔薇戦争」が勃発した15世紀のイングランドがモデルとなっている。

 史実をテーマにしたアニメや漫画作品は数多くあるものの、主人公の異色のキャラクター性と、王宮をテーマに回を追うごとに引き込まれるストーリー展開が話題を呼んでいる。ヨーク家の三男として生まれたリチャードを取り囲むさまざまな人物の愛や憎しみがテーマとして描かれており、複雑になっていく人間関係と予想を裏切る展開から目が離せない。

 本作は史劇に基づいた物語なので、登場人物たちも実際に存在した人名を引き継いでいる。主人公リチャードのモデルとなった、実際のリチャード三世は戯曲の中では醜い姿をしたずる賢く冷酷な人物として描かれているが、軍事的才能に恵まれた「勇敢な王」だったという逸話も挙げられている。本作におけるリチャードの、ときに非道な手段を選ぶ程の王位への強い執着には、冷酷さだけでなく、悪役特有の暗い空気をまとった優美さが感じられる。

 さまざまな野望が渦巻く王宮の中で、常に周りを見てチェスの盤上のように作戦を練るリチャードに、自分本位な王位継承者たちが振り回されていく姿は実に清々しい。その緻密で華麗な手さばきは、悪魔の子として忌み嫌われた本作のリチャードが、史実のリチャード三世より受け継いでいる要素なのだろう。

 本作で登場する人物はリチャードをはじめ、史劇にかなり忠実なキャラクター設定がなされている。そのため、単なるダークファンタジーとしてでなく、戯曲の物語の新解釈としても楽しむことができる。

 例えば、アニメ・史劇共にアン・ネヴィルとの婚姻が描かれているが、アンのリチャードへの真っ直ぐな想いや、ランカスター家へ嫁いでいる間の心の葛藤は、アニメだからこそより深く楽しめる。アニメ版のリチャードの設定によって、周囲のキャラクターの感情にも新しい解釈が加えられている。

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