『シン・ウルトラマン』がロケットスタートを決めた要因は? 気になる興行成績の行方

 全国の劇場で公開中の映画『シン・ウルトラマン』が目下、破竹の勢いで大ヒットを飛ばしている。公式発表では公開3日間で観客動員数64万人、興行収入は9.9億円を突破したという。本作と同じく樋口真嗣監督の特撮映画『シン・ゴジラ』(2016年)が、公開3日間の観客動員数56万4千人、興行収入8.4億円だったことを思うと、凄まじいロケットスタートと言えるだろう。配給元の東宝によると、『シン・ゴジラ』との興収対比が約117%、観客動員対比では約113%の快調な出だしとのこと。庵野秀明は『シン・ゴジラ』で総監督、『シン・ウルトラマン』では総監修と、作品への関わり方こそ異なるが、樋口真嗣×庵野秀明コンビの東宝特撮映画が自らの成績を塗り替えた形になる。

 『シン・ウルトラマン』は、円谷プロ制作の『ウルトラQ』(1966年)に続く空想特撮シリーズの第2弾『ウルトラマン』(1966年)を、現代的な視点でリブートした長編映画だ。脚本担当の庵野が、原典の『ウルトラマン』テレビシリーズから5つのエピソードをピックアップして、それらのエピソードの怪獣、宇宙人が新たなデザインで本作に登場する。ただし怪獣は“禍威獣(かいじゅう)”、宇宙人は“外星人(がいせいじん)”という呼び名に改められた。その他の基本部分は原典通りで、遠い他の星からやってきた銀色の巨人が地球人の姿を借り、地球上で暴れる禍威獣や外星人らと戦い、これを退けることの連続である。巨大生物に対処する官僚たちの災害シミュレーション的な側面を持つ『シン・ゴジラ』に比べ、理詰めの説明よりも空想を軸にした、やや緩めの世界観でドラマは進行する。

 『シン・ウルトラマン』大ヒットの要因は色々と分析できる。まず本作の製作発表が2019年であることに留意したい。これは『シン・ゴジラ』公開の2016年より後で、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下、『シン・エヴァ』)が公開される2021年よりも前。総監督・庵野、監督・樋口の『シン・ゴジラ』の反響は、日本はもとより海外にも充分知れ渡った後で、観客の期待感が高まっているところへ、庵野の監督作『シン・エヴァ』が公開され、記録的なロングランの末に興行収入102億円を超える成功を収めた。さらに庵野自身の足跡を辿る大掛かりな美術展『庵野秀明展』が2021年秋から東京の国立新美術館で開催(2022年春からは大阪で開催中)。

 こうした話題のブースターで加速が付き、機運の高まりを受けた中で『シン・ウルトラマン』が封切られている。今まで庵野が関わってきた数々の映画同様、本作も秘密主義で制作が進められ、事前に発表された出演者と、予告編で窺い知れる映像以外の情報が少なかったのも、集客に大きく貢献したと言えるだろう。つまりSNSや各メディアでネタバレを喰らう前に自分の目で早く確かめよう、という心境から公開直後に足を運ぶ人が『シン・エヴァ』同様に多かったことだ。

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