『39歳』が教えてくれた、自分の手で選んでいくことの大切さ 「家族」と呼べる3人の友情
また、人生の多くの時間を費やす仕事についても、ジュヒが40歳を目前に迷惑客と正面切って対立し、会社を辞めるという決断をしてくれた。3人のうち一番頼りなさげに映るジュヒが、そんな大胆な行動に出たことに驚かされる。さらに学びたいことを見つけて、自分のお店を出していこうという力強い姿にも拍手を送りたい気分になった。
年齢を重ねるほど、挑戦よりも現状維持を選びがちになる。だが飛び出したいと思ったときには、その一歩を踏み出してもいい。人生は一度きりで、巻き戻しもできないのだから、職場だって自分の意思で選びとっていくくらいでいい。もちろん、それには新たなことを学ぶ努力も必要だが、それを応援する「家族=味方」がいれば、何歳からだってトライ可能なのだと教えられる。
そして、10年以上ひたすらジンソク(イ・ムセン)への想いを貫いたチャニョンの愛についても、その芯の強さに頭が下がった。韓国とアメリカで離れ離れになっても、ジンソクが結婚後プラトニックな関係でありながら「不倫」だと周囲に責め立てられても、そして人生の終わりを覚悟したときにも……チャニョンの愛情は常にジンソクの幸せを願う形で注がれた。
誰からも理解されなくても、恋人から友人へと関係性が変わっても、チャニョンの想いはまっすぐでピュアで揺るがない。その強さに、ジンソクもその愛を貫く勇気を持つまでに変わることができた。最初こそジンソクの煮え切らない態度に苛立っていたミジョも、ジュヒも、そして視聴者である私たちも、そんな2人のひたむきな姿に愛を信じることができたのかもしれない。
これまでどんなに壁が立ちはだかろうとも、一緒に生きることを選び続けた2人。それは、もしかしたら生と死という圧倒的な距離さえも超えていくのではないか。きっとジンソクならチャニョンのために毎年クリスマスツリーを飾り続けてくれるのではないかと思うと、胸が一杯になる。
人生に正解はない。ミジョもチャニョンもジュヒも悔いのない人生を送りたいと願いながらも、いざ「死」を前に何ができるのか戸惑ってばかりだ。誰もが今の年齢を、その状況を「初めてだからうまくいかない」と、ぶつかりながら試行錯誤を繰り返す。それでも、変わらないのは自分が愛したもの、守るべきもののために、自分の信念を貫くという強さを彼女たちは見せてくれた。
どんなに考えても「もっと何かできたのではないか」と歯がゆい思いをするのが人生だ。ならば彼女たちのようにまっすぐで、清々しいほどの決断をしてながら歩んでいきたい。まだ大切な人の、そして自分自身の旅立ちを、もう少し先に考えられる今から。3人にならって自分の人生を選んでいく勇気を持とう、そう思えるドラマだった。
■配信情報
『39歳』
Netflixにて独占配信中
監督:キム・サンホ、ユ・ヨンア
出演:ソン・イェジン、チョン・ミド、キム・ジヒョン ほか
(写真はJTBC公式サイトより)