『チェリまほ』などで“理想的な彼氏”役をコンプリート 赤楚衛二演じる“子犬系男子”に注目

 4月8日に公開された『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』は、2020年10月期に放送されたラブコメディドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系/以下『チェリまほ』)のその後を描く劇場版。ドラマ放送時はかなりブームになり、特に主演・赤楚衛二のブレイクのきっかけにもなった。

 赤楚は、これまで爽やかな好青年役を数多く演じてきた。中でも“子犬系男子”と呼ばれる人懐っこい役柄がハマり、その等身大な演技が幅広い層から注目を集めている。現在28歳の赤楚は、10代の頃にモデルとして活動し、16歳の時に名古屋の男性グループ「IKEMEN☆NAGOYA」(後のBOYS AND MEN)に所属。2013年に「サマンサタバサ」のメンズモデルオーディションでグランプリを受賞した翌年に、小栗旬や田中圭など数多くの俳優が所属するトライストーン・エンタテイメントへの所属を決め、俳優として活動を開始した。2015年の『表参道高校合唱部!』(TBS系)でドラマに初出演し、2017年に『仮面ライダービルド』(テレビ朝日系)の仮面ライダークローズ役で注目を集めるという、まさに若手俳優のエリートコースを歩んできた。

『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(c)豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会

 そんな彼のブレイク作とも言える『チェリまほ』は、童貞のまま30歳を迎えたことにより“触れた人の心が読める魔法”を手に入れた安達 (赤楚衛二)が、彼に好意を抱く超イケメンの営業部のエースで同期の黒沢(町田啓太)の「⼼の声」を知り、恋を育んでいくBLラブコメディ。本作が成功した理由を考えると、童貞という恋愛に慣れていない人が恋をする初々しさを、BLという設定の中で極当たり前の恋愛劇として捉えたこと。心が読めることで、変にぶつかり合わずに相手の気持ちを思っての優しい行動が多く、言葉を出さずもお互いの想いが募っていくピュアさ。そして登場人物たち皆が優しく、全てが愛おしい世界であること。安達は相手の心が読めることで、演技も相手の本心を察したちょっと引き気味の表情をするし、逆にその本心を知って愛おしい目線を向けるなど、物言う「目の演技」に引き込まれる。また、最初はひ弱そうに見えるが、仕事も恋愛も自分と向き合いながら、一歩ずつ進んでいく成長した姿をきっちりと見せるところもまた応援したくなる要因。そして、黒沢が作る手料理に毎回「うんまっ!」と歓喜の声を上げる姿が母性本能をくすぐり、心も顔も可愛くピュアな役をしっかりと受け止め、男子の可愛いさが際立つ見事なヒロインぶりを見せた。

『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(c)豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会

 ただ『チェリまほ』以前に、馬場ふみかとW主演を務めた2019〜2020年のドラマ『ねぇ先生、知らないの?』(MBS)が、彼にとって子犬系男子役がハマるきっかけとなった作品だろう。恋愛経験なしの人気女性漫画に一目惚れしたカリスマ美容師役で、どれだけ放置されても応援してくれる最高の彼氏を演じる。見つめる視線がとにかく優しく、それでいて男の色気たっぷりに献身的に相手を包んでいくという役柄が女性視聴者の心を鷲掴み。以降その系譜が続き、2021年の『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)で演じた、主人公・佐藤愛(小芝風花)を支える編集部の頼れる先輩・樋口役は、後輩の愛に好意を持つも、愛が副編集長の長谷部(中島健人)に一途で見向きもされないという苦しい立場だった。そのやるせない気持ちを抱える葛藤が痛いほど伝わり、先輩の暖かい眼差しという『チェリまほ』とは違った新たな魅力を見せた。

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