『モービウス』は北米でも興行的に苦戦しているが、それ以上に批評家、スーパーヒーロー映画ファンダムから厳しい意見が寄せられている。特にファンダムの声として大きいのは、エンディング、及びポスト・クレジットにおける同ユニバースの別のキャラクターに関する描写や言及の精度が低く整合感に問題があること、また予告編にあった思わせぶりなシーンや背景が本編ではカットされていたことに対する批判だ。作品にとって不幸なのは、作品そのものに対する批判よりも、それらサービスカットに対する批判の声が大きいことで、スーパーヒーロー映画、特にユニバース作品が抱える困難さがそこに集約されていると言っていい。

　そのあたり、さすがにマーベル・シネマティック・ユニバース作品はいつも周到で、作品そのものは及第点以下であっても、ユニバース展開にまつわるサービスカットがもたらす期待感や考察ネタでそれを打ち消してしまうようなことが何度かあった。しかし、それはそもそも作品に対する批評や評価と言えるのだろうか？　北米や日本以外での『モービウス』の興行は予測を下回ってはおらず、世界興行では赤字にはならない見込みであると報じられているので、シリーズとして続いていく可能性はある。その際は、ユニバース作品として整合感だけでなく、監督をはじめとするスタッフがクリエイティビティを存分に発揮できるような環境整備も必要だろう。

■公開情報
『モービウス』
全国公開中
出演：ジャレッド・レト、マット・スミス、アドリア・アルホナ、ジャレッド・ハリス、アル・マドリガル、タイリース・ギブソン
監督：ダニエル・エスピノーサ
脚本：マット・サザマ、バーク・シャープレス
配給：ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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