『アオアシ』“Jユース”世代の成長を追いかける群像劇 必殺技のない原作をどうアニメ化?

 TVアニメ『アオアシ』が4月9日より、NHK Eテレにて放送が開始される。

 2021年5月28日にアニメ化を発表して以来、その注目は高まるばかり。今回は本作がどのような作品であるかに加えて、TVアニメがどのような作品になるかまでを探ることができればと思う。

 愛媛県松山市在住の小林有吾によるマンガ作品である本作は、『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館刊)で現在連載中。累計1000万部を突破し、第65回小学館漫画賞一般向け部門を受賞した。日本サッカー界にも様々な形でコラボレーションをしており、サッカーのチーム戦術だけではなく、個人戦術やクラブチームのリアルな側面にもスポットを当てた本作は、まごうことなき「いまもっともアツいサッカー漫画」のひとつとして数えられる漫画作品でもある。

 主人公である青井葦人(あおい あしと)は愛媛県の公立中学の弱小サッカー部のFWとして活動していたが、類まれなセンスを見せながらも自分勝手なプレースタイルに固執してしまった結果、チームを勝たせることができず、地方大会で破れてしまう。

 その試合を見ていたユースチームの監督・福田達也は、試合後に海辺でうなだれる彼を見つけ、いくつかのアドバイスを送る。葦人はそのアドバイスを体得しようと1日かけて練習に没頭。メキメキと上達していく彼のサッカーセンス、何よりもサッカーにかける情熱を目の当たりにした福田は、自身が率いる「東京シティ・エスペリオンFC」のセレクションに招待し、葦人が愛媛から単身東京のセレクションへと乗り込むところから物語はスタートする。

高校サッカー部と異なる「Jユース」という環境

 本作が特徴的なのは、まずJリーグの男子高校生年代「Jユース」世代を扱っている点にある。

 サッカーやJリーグを詳しく知る人にはあまり馴染みがないと思うが、高校サッカー部とユースチームとではプロJリーガーへの道筋は大きく異なる。

 ユースチームの特徴として、トップチームの練習を間近で見ることができ、プロと近しい待遇で練習や試合をふくめたサポートを受けられる点が挙げられる。練習環境ももちろんプロとして活動していくうえでの設備が充実しており、コーチング一つとってもプロのコーチ陣による指導があるのでより技術を磨くことができる。そのなかで才能ある選手は高校生のうちにプロチームに帯同できるなど、プロ選手としての自覚が芽生えやすい環境が整っている。

 本作登場するチーム名は現実のチームとはもちろん違うのだが、高校サッカー部とJリーグのユースチームがしのぎを削るプリンスリーグに関する描写、ユースチームで生活する際の選手・家族の費用、ユースからトップチームへと契約する流れなど、これまでのサッカー漫画ではあまり描かれることの少なかったJリーグチームが保持するユースチームの実情を克明に描いている。

 小中学校の世代からユース(Jr.ユース)チームへと入団しようと様々なセレクションに参加する才能ある子供たちがたくさんいるなか、主人公の葦人は高校入学のタイミングで愛媛から上京してユースチームに入団する。

 葦人は、自身の母親と兄から受けてきた期待にこたえようと努力していく。そのなかで、幼いころからチームで英才教育を受けてきたチームメイトと、葦人ら途中から入団してきたメンバーとの軋轢も描かれる。スポーツとして勝利を優先するのではなく、プロチームへの加入するためにコーチへのアピールを優先しようとプレーする彼らのように、様々な狙いや考えを持った選手の心境・立場についても、決して邪になりすぎることなく真摯に描いているのもミソだ。

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