『吉祥寺ルーザーズ』ではシットコムに挑戦 秋元康が大人数ドラマを得意とする理由とは?

 秋元康が企画・原作を担当するドラマ『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京系)が4月から放送される。NEWSの増田貴久を主演に迎え、田中みな実や國村隼、濱田マリと人気俳優が集結し、シェアハウスを舞台にした群像劇となる。3月13日で最終回を迎えた『真犯人フラグ』(日本テレビ系)や『もしも、イケメンだけの高校があったら』(テレビ朝日系/以下『もしイケ』)を含め、こういった大所帯のドラマを秋元は得意とするように思える。『あなたの番です』(日本テレビ系/以下『あな番』)や『真犯人フラグ』などのミステリーでは、数多い登場人物の特徴を伏線としてうまく使う手腕が目立ち、『もしイケ』や『マジすか学園』(テレビ東京系)などのコメディでは、登場人物一人ずつのキャラ立ちのうまさが発揮されている。アイドルのプロデュースがこういったドラマ製作に生かされているのではないだろうか。そこで、秋元康×大人数ドラマについて紐解いてみたい。

 放送作家や作詞家、そしてプロデューサーとして幅広く活躍し、日本のエンタメ界に多大な影響を与える稀代のヒットメーカー、秋元。特に2000年代に入ってからは、AKB48や坂道系の総合プロデューサーとして一時代を築いているが、ここ最近はアイドルプロデュース業以上に、2クール連続で3本手がけるほどドラマ制作に力を注いでいる印象だ。元々、おニャン子クラブを手がけた1985年辺りから、菊池桃子主演ドラマ『卒業-GRADUATION-』(日本テレビ系)を皮切りに、テレビ局とタッグを組み、毎年のようにドラマを提供し続けた実績がある。1990年代後半から2000年代中盤にかけては、小室哲哉やつんく♂が音楽業界を席巻するのと比例するかのように表舞台から一線を退いた印象を受けたが、2005年から総合プロデュースするAKB48が社会現象を巻き起こした。

  そして、彼女たちのプロデュースの一環としてドラマも手がけ、数々のヒット作を生む。そのきっかけとなったのが、AKB48主演ドラマ『マジすか学園』シリーズだ。この手のアイドルドラマは視聴者に対するメンバーの顔見せ的な要素が強く、特にAKBは総選挙があるだけに、いかにメンバーそれぞれに見せ場を作り、個性を光らせるかが重要である。ただ最終的には主演の前田敦子の偶像を大きくし、ドラマという一つのグループのフォーメーションをしっかりと築くという、プロデューサーとしての手腕を発揮した。

 また、『マジすか学園』シリーズが1990年代に秋元が制作してきた本格的なラブストーリーとは一線を画し、ミステリー要素のある学園バトルものであることも特筆したい。もともと秋元がミステリー好きというのもあるが、メンバーの新たな一面や個性を見せたいという目的と、一人一人がキーパーソンになれるという点で、ミステリー要素のある学園バトルものは大所帯グループアイドルのドラマとしては扱いやすい題材なのだ。後に、欅坂46の『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)や、けやき坂46(現:日向坂46)の『Re:Mind』(テレビ東京系)などの人狼的な密室劇など、大人数のミステリーが定番化していく。こうしたノウハウが、『あな番』や『真犯人フラグ』のような、全ての登場人物に焦点が当たるキャラ作りに繋がる。これはAKB48の楽曲までになった「チャンスの順番」という思想が大きく、いま秋元が大人数の群像劇を得意としている理由だと考える。

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