『ファイトソング』清原果耶×間宮祥太朗の幸せな結末 “音楽”を全身で感じる最終回に

 どこかわだかまりを持った男女(今回で言えばもうひとり男が加わるわけだが)が同じエレベーターに乗り合わせば、何かのはずみで停止して、修理が来るまで閉じ込められてしまうというのはエレベーターを用いたシーンの常套パターンである。

 花枝(清原果耶)の耳が聞こえなくなって2年の月日が流れ、芦田(間宮祥太朗)はたまたま花枝の耳のことを知る。そして再会を果たすも逃げ出してしまう花枝。追いかける芦田と慎吾(菊池風磨)と共に同じエレベーターに乗り合わせ、閉じ込められてしまったところから『ファイトソング』(TBS系)の最終話ははじまる。


 エレベーターが動き出すまでの間、音声入力のチャットツールを使ってやりとりをする3人。そんななか、「自分が決めたことは絶対に変えない。それは強さでもあるけど、それしかできない弱さでもある」と、花枝の“頑な”な部分を指摘する芦田。それに怪訝な表情を見せる花枝だったが、芦田がきちんと本意を伝えられないままエレベーターは復旧。なんとか言葉の続きを伝えようとアピールするものの拒絶されてしまう芦田は、意を決して慎吾に恋のキューピッドを依頼。そして慎吾は、花枝に芦田の家のクリーニングに行くよう仕向けるのである。

 チャットアプリのブロック解除をお願いしたり、もう一度話を聞いてもらえるようにアピールする芦田。その過程で自作の(しかもしっかりとデザインされた)紙に書いて伝えるそのさまは、前回のエピソードで花枝に長年の想いを伝える慎吾の告白シーンと重なるものがある。とりわけ花枝の耳が聞こえなくなってからの2つのエピソードでは、さまざまな形で“言葉を見せる”工夫が施されている。なかでも今回特に大きな働きを見せるのは「UDトーク」というコミュニケーションアプリであり、やはり少し前の時代と比較すると音声入力の精度も上がってきているし、即座に他言語にも変換できるなど、以前よりもさまざまなボーダーははるかに解消されてきていると感じるばかりだ。


 このドラマの最大の肝でもある“音楽”を耳以外で味わうことも同様である。今回の劇中では“振動”によって感じるものとして扱われていく。芦田の曲を聞くことができないことを“向き合えない理由”と語る花枝。しかし芦田は、花枝を屋上に連れて行きアンプの上に一緒に座り「ファイトソング」を弾き語る。芦田の背中に耳を当てる花枝。これまでこのドラマの劇伴として使われていたメロディが、芦田が“取り組み”を経て作り上げたこの楽曲であることが判明すると同時に、三三七拍子のリズムが花枝へと確かに届く。ここは映像的にわかりやすい視覚表現ではなく主人公が全身で音楽を感じること、つまりそれは、健聴者も難聴者もまったく同じ音楽の味わい方ができることを示しているのだろう。

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