2022.03.02 19:01

ギレルモ・デル・トロ、第94回アカデミー賞授賞式の省略形式を批判　アカデミー側は弁明

文＝IZUHO

　『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パシフィック・リム』など、数々の作品を手がけてきたギレルモ・デル・トロ監督が、第94回アカデミー賞授賞式における開催（配信）方式について言及した。

　今年度のアカデミー賞授賞式は、4年ぶりに司会者を迎えて開催予定であり、レジーナ・ホール、エイミー・シューマー、ワンダ・サイクスが共同司会を務める。

　しかし今年度の授賞式では、全23部門のうち、短編ドキュメンタリー賞、編集賞、メイクアップ＆ヘアスタイリング賞、作曲賞、美術賞、短編アニメ賞、短編（実写）映画賞、音響賞の8部門の賞ついて、受賞の様子は生放送内ではなく、放送開始1時間前に事前収録され、編集を経て生放送内に織り込まれることが、2月22日（アメリカ現地時間）に映画芸術科学アカデミー会長、デヴィッド・ルービンより発表された。

　今年度のアカデミー賞では、デル・トロ監督が手がけた『ナイトメア・アリー』が作品賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞の4部門でノミネートされており、デル・トロ監督は、ハリウッド批評家協会賞（HCA Film Awards）の映画製作功労賞（Filmmaking Achievement Award）を受賞した際の受賞スピーチにおいて、アカデミー賞の表彰方式について言及した。

「今日、ここにある映画のほとんどは、多くの困難な状況に立ち向かい、たくさんの人々と協力しながら作り上げたものです。パンデミックという困難な状況のなかで、リスクを負いながらも、私たちと一緒に作品を作った人々の協力があって、成し遂げられるものなのです」「（授賞式の変更について）考えるべき年があったとしても、今年は特に、アカデミー賞で彼らの名前をリアルタイム（同時刻配信）で聞くことができない年であるべきではないと思うのです。今年はそのことについて声を大にして言うべき年なのです」と、映画製作に関わる誰もが称賛に値することを主張し、開催方法について言及した。

　こうしたデル・トロ監督の発言をはじめ、受賞式の開催方法についてさまざまな意見が飛び交う中、映画芸術科学アカデミーのCEOドーン・ハドソンとルービン会長は、先日の変更発表後初めてとなるインタビューに応じ、改めて今年度の授賞式内容について説明した。

　ハドソンは、「取締役会は、放送時間内に授賞式の模様をおさめるために、放送内容を変更する必要性について議論し、同意しています。議論は続いていますが、今年度は特に緊張性を帯びています。8部門に関する決定は、私たちがたどり着いたクリエイティブな解決策でした」、「私たちは、23部門のすべての賞を放送するという価値を守りながら、視聴者が望む3時間の番組内容と、限られた時間内で映画を称える方法について、どうしたらよいのか考えました。私たちは、カテゴリを分けて収録するなど、さまざまな方法を検討しましたし、ノミネート者と受賞者に対し、最善の方法で敬意を払うためにはどうしたらよいかを考えました。そして今年は変更を加えなければならない重要な年であったため、今回の変更計画を決定しました」と説明した。

　ルービンは、「クリエイティブおよびプロダクションチームは、最も重要な瞬間、つまり感動的なスピーチ、名前が呼ばれたときのリアクションに焦点を当てます。しかし、そのような場面以外にも、ステージまでに向かう瞬間や、スピーチの準備をする時間など、大切な瞬間はいくつもあり、全てを網羅するためには多くの時間が必要です。そのようなことも全て踏まえ、最も影響力があり、感動的な部分である部分に迫っていきたいと考えています」とコメントし、ハドソンもまた、「受賞者による素晴らしく感動的なスピーチは、全部門において登場させたいと思い、私たちにとって重要なことです。しかし簡単なことではありません」と述べ、試行錯誤しながらも、番組をよりよいものにしようと試みていることについて説明した。

　またルービンは、今回の変更発表により一部の間で誤解を招いてしまっていると感じているようで、「私たちは、映画製作にかかわるすべての貢献者を、今年のショーから除外するような変更はしません。絶対にありえないことです」と強く主張した。さらに、視聴率が低下している問題にも触れ、「番組と組織の将来を見据え、前に進まなければなりません。私たちは、新しい祝典の方法を探し、新しいビジョンを見つけようとしているのです」とコメントした。

　第94回アカデミー賞受賞式は、3月27日（アメリカ現地時間）に開催される。