『恋せぬふたり』ライフイベント=こなすべきタスク? 高橋一生からの心強いメッセージ

 年越し蕎麦を、大晦日のどのタイミングで食べるのか。ある人は家族団らんが揃う夕食に。ある人はその名前の通り“年越し”の瞬間に。あるいは“細く長く”な蕎麦より“太く長く”とうどんで。それならば、夕飯に蕎麦を、年越しにうどんを……なんて人もいてもいい。

 年に1回ある大晦日の食事という限られた場面でさえ、これほどいろいろな考え方と選択がある。「あなたはそうするのね」なんて楽しい話題のネタにもなる。なのに、人生における多くの選択になると「これが普通」「それは普通じゃない」と、やたら干渉されやすいのはなぜなのだろう。

 よるドラ『恋せぬふたり』(NHK総合)第6話は、咲子(岸井ゆきの)の妹・みのり(北香那)の夫の浮気、そして出産騒動を中心に描かれた。そして「恋愛」「結婚」「出産」「子育て」「マイホーム」……とライフイベントが、まるで人生ゲームのように、こなすものになっていないかと問われるような回だった。

 誰もが幸せになりたいと願い生きている。たった1度の人生を後悔なく生きるためには、どうしたらいいのか。みんな迷いながら日々を選択しているのだ。それはどんなセクシュアリティであっても同じこと。

 そこで羽(高橋一生)を通じて咲子に、そして視聴者に送られたのは、自分の人生なのだから「周りに合わせて考えなくても大丈夫」という心強いメッセージだった。見失わないでほしいのは「何を大事にしたいか」という自分の心であること。そして誰の味方でいたいのかということ。その結果として、誰かと家族になったり、1人で生きる選択になったりする。

 先に選択があって心の辻褄をあわせるのではなく、自分の心があってこその選択だということだ。ところが、年越し蕎麦のようにシンプルに選択を楽しめない理由がある。それは、人生は他者と複雑に絡み合っていくから。良くも悪くも周囲の影響を受けて「変わる」という選択もしていくものだから。

 第6話では、微笑ましい変化も見受けられた。登場したばかりのころはハラハラとさせられる発言を繰り返していたカズ(濱正悟)が、咲子に対するみのりの攻撃的な発言に「普通は人それぞれだから」「それは言い過ぎ」と擁護する側に回ったこと。性愛に関する話題全般が苦手な羽を「こういう話……」と気遣うようになったこと。

 これは咲子を「好きだ」という気持ちから生まれた大きな変化。そういう意味では、このドラマは恋の力そのものを決して否定はしていない。誰かを愛することが、その人の人生を豊かにするという場面も確かにある。

 しかし、それだけではないという点も、本作ではしっかりと伝えていく。恋愛ではなくとも、人と接することで視野が広がり、新しいものを受け入れることだってできる。羽が咲子とカズとの生活を通じて、邪道ピザの魅力を知ったように。

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