『ファイトソング』で『おかえりモネ』を彷彿させる名場面誕生 花枝×芦田のキスシーンも

 耳のこと、手術のことを誰にも言い出せずにひとりで抱え込んできた花枝(清原果耶)。そんな花枝の様子がいつもと違うことを察知した直美(稲森いずみ)は話を聞き出そうとするが、逃げ回る花枝。結局観念して慎吾(菊池風磨)や凛(藤原さくら)もいる前ですべてを打ち明け、芦田(間宮祥太朗)には言わないでほしいと頼み込む。翌日、黙っていた罰として鬼のコスプレで庭掃除をさせられていた花枝の前に、直美たちと同じように花枝を心配していた芦田が、実家から送られてきた海鮮類を持ってやってくる。そして慎吾たちと4人で花枝の部屋で鍋パーティーを開くことになるのだ。

 2月22日に放送された『ファイトソング』(TBS系)第7話は、冒頭10分間からクライマックスのような深妙なムードがただよう。手術の日程が近付き、耳のことを誰かに話さないわけにはいかなくなったけど言えない花枝。そんな花枝が何かを隠していることをすぐに見破る“家族”たち。そして「だって」と「ごめんなさい」と「みんなに言わなきゃいけないことが」とどぎまぎとした様子でいくつもの言葉を繰り返し、無駄な抵抗の末に落ち着きを取り戻した花枝は、丁寧に一言ずつ、自分の病状や手術のこと、それに伴うリスクについて説明していく。


 もちろん花枝が直美や慎吾たちをはじめとした周囲の支えてくれる人たちにすべてを告白するという展開は、遅かれ早かれやってくることは想定の範囲内ではあったが、これは想像以上に見事なシーンとなった。過剰な感情の起伏をもたらさずに花枝という人物はもちろん他の登場人物たちの立ち位置や性格をしっかりと表現し切っていたようにも思えてならない。さながらそれは、『おかえりモネ』の登米・気仙沼編の最後の回、清原演じる百音が家族に東京に行くことを告げ、ずっと言えずにいた“島を離れた理由”を明かすシーンとどこか通じるものがある。

 いずれにせよ清原果耶は、この“言えずにいた”ということで親しい間柄の人々と自然と壁を作ってしまってから、それを取り払って肩の荷を下ろすプロセスを表情の雲行きひとつで見せるのが巧い(もちろんそれだけじゃなくずば抜けて秀でた演技をする演者であることは言うまでもないが)。しかも今回の場合は、慎吾や凛に対しては秘密をなくしたけれど、芦田にはまだ秘密を持ったままという状態であり、鍋を囲んだりトランプで遊んだりしながらはしゃぐ4人の室内のシーンは、ある種解放されたかのような穏やかさと、まだどこかヒリヒリとした緊張感が共存する。その緊張感を取り除くのは、やはり花枝と芦田のぎこちない恋模様であり、ようやく訪れたキスシーンであるわけだ。

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