『カムカム』安達祐実演じるすみれからにじみ出る寂しさ ひなたは彼女から何を学ぶ?

 コンテストには落選してしまったものの、大月家誕生の一端を担った(?)と言っても過言ではない伴虚無蔵(松重豊)に見込まれ、条映太秦映画村でバイトをするようになったひなた(川栄李奈)。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第76話では、榊原(平埜生成)に案内され、ひなたが生まれて初めて自分の好きな時代劇の撮影現場に足を踏み入れる。

 るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)が『妖術七変化 隠れ里の決闘』を観てから約20年が経った。懐かしそうにその年数を口に出す錠一郎だったが、その言葉を受けたるいは何とも言えない表情をする。それはつまり、錠一郎がトランペットを置いた時間を意味するからだ。京都にやってきてから今日にかけて、我々が見る錠一郎の姿は基本的にちゃらんぽらん。るいが一家の大黒柱となって、回転焼き屋で生計を立ててきた。ひなたや桃太郎が生まれてからは子供の世話をする錠一郎の良い父親ぶりが目立ったが、果たして彼はこの20年間、本当に何もしてこなかったのだろうか? 河原でぼんやりと少年たちが野球をする様子を眺めながら、音符を書き込んでいたことも思い出される。もしかしたら、彼は彼なりに何か密かに行動を起こしていたのかもしれない。

 さて、人が行ったり来たり忙しない中、進められていく撮影。かの『暴れん坊将軍』を彷彿とさせる『破天荒将軍』の撮影現場では、クライマックスシーンの撮影が始まった。本物の破天荒将軍(徳重聡)に会えたことに興奮するひなただったが、その興奮はすでに“破天荒将軍”という役になりきった上での彼との対面だったからのこと。彼女のイメージ通りの彼に会えたからの歓喜だ。しかし、英語ではこういう文句がある。「Never meet your heroes」、つまり“憧れの人に会ってはいけない”。それがなぜかは、ひなたが子供の頃から憧れていた『棗黍之丞』シリーズにレギュラー出演していた美咲すみれ(安達祐実)との出会いでわかるようになっている。

 ひなたはすみれに会って興奮するも、彼女の目の前にいるのは“おゆみちゃん”ではない。東京から7、8年ぶりに帰ってきた彼女はいささか高圧的で、“ザ・いい人オブいい人”の榊原からのオファーも不機嫌そうに渋る。ひなたが思わず「サイン貰っていいですか?」と休憩所で話かけた時も、「……いいわよ」と“快諾”はしなかった。まあ、これに関してはひなたが少し“ルール違反”をしたのもあるので、その態度に無理もないのだが。

関連記事