高橋一生は“なんでもござれ”な俳優 『岸辺露伴』などドラマに収まらない名演づくしの3本

『ロマンスドール』(2020年)

 『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)から19年ぶりに蒼井優と共演し、二人で夫婦に扮した『ロマンスドール』。珠玉のラブストーリーである本作において高橋が演じているのは、ラブドールの職人・哲雄。彼がホンモノの人間の感触に近い女性の胸を再現すべく、新作の制作に苦心しているところ、モデルとして現れた園子(蒼井優)に心惹かれ、あっという間に恋に落ちる。物語はこれだけに留まらず、描かれるのは夫婦となった“その後”まで。ネタバレ回避のため多くは語らないでおくが、人と人とが肌を触れ合わせることの尊さを本作は訴えている。“社会的距離”の確保の重要性が叫ばれる直前に公開されたものとあって、本作の主題はより強固なものになっていると思う。ちなみに、『スパイの妻』(2020年)及びその〈劇場版〉でも高橋と蒼井は夫婦に扮しており、同じ組み合わせでありながら、熟達した演技者である二人だからこそ表現できる夫婦像の違いを見比べてみるのも一興だろう。

 映像作品のストリーミングサービスにアクセスすると、高橋の出演作は相当数、鑑賞することができる。彼がまだ十代や二十代前半の頃の、瑞々しい演技に触れてみるのもオススメだ。全作品を網羅することを目標とすれば、日々が楽しくなりそうである。2022年は1月から主演ドラマ『恋せぬふたり』(NHK総合)が始まり、『雪国 -SNOW COUNTRY- 』(NHK BSプレミアム)も放送予定。世界的名作の実写化で、こちらも主演だ。映画の出演情報もこれから開示されていくのだろうし、やはり高橋一生の真価を味わうことができる演劇作品での彼との出会いも待ちきれない。

■放送情報
『スパイの妻』
NHK総合にて、2022年1月10日(月・祝)1:05~2:59再放送
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大
作:濱口竜介、野原位、黒沢清
演出:黒沢清
(c)2020 NHK, NEP, Incline, C&I

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