19歳の広末涼子が受け止めた高倉健の涙 語り継がれる『鉄道員(ぽっぽや)』の名シーン

 『鉄道員(ぽっぽや) 』といえば、主演の高倉健ともども忘れがたい出演者が広末涼子だ。物語進行上の都合で出番は後半に差し掛かってからだが、広末が演じる女子高校生が現われてからが本作の本領発揮と言ってもいい。それまで同僚にも町の人にも自分の心情を口に出してこなかった乙松が、自分のこれまでの人生をしみじみと振り返りながら本心を語る。今まで心の奥底に押し留めてきた様々な彼の想いが堰を切ったように溢れ出すクライマックスは、当時まだ19歳だった広末が高倉の芝居を受け止めて情感たっぷりの演技を見せている。この場面に至るまで殆ど感情的にならなかった乙松が初めて涙する場面では、2019年の本作の特別上映で舞台挨拶に立った広末が「スタッフも声を殺して泣いていた」と語ったほど、観る者の心を揺さぶる名シーンである。

 他にも2020年に惜しくも他界したコメディアンの志村けんさんが、乙松に介抱される酔っ払いの炭鉱夫役で出演しているほか、降旗監督、木村カメラマン共々、高倉と何度も組んでいる小林稔侍が、乙松を気遣う機関士時代からの同僚役で味のある演技を披露している。

 さて、東映チャンネルの『いま観ておきたい絶対名作30』では毎月長編アニメもラインナップに加わっているのだが、1月には『白蛇伝 4Kリマスター版』が放送されることになっていて、こちらも要注目だ。日本のアニメーションの草創期を描いたNHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)で、劇中に登場した架空のアニメ映画『白蛇姫』の元ネタとして知っている人も多いだろう。『白蛇伝』(1958年)は中国に古くから伝わる寓話をベースに、日本初の総天然色(すなわちオールカラー)の長編漫画映画と銘打たれて公開された。現在まで続いている、ありとあらゆるアニメ映画の原点と呼んでも過言ではない作品で、宮崎駿を始め、多くのアニメーターがこの映画に影響を受けてアニメ業界に入ったと言われている。経年で退色したり傷がついた原版を、公開当時の資料と照らし合わせながら2019年に修復した4Kデジタルリマスター版が今回放送される。こうしたクラシック作品は民放の地上波では殆どお目にかかる機会がないので、1月の放送をお見逃しないように。

『白蛇伝 4Kリマスター版』(c)東映

■放送情報
「東映創立70周年記念 いま観ておきたい絶対名作30 Vol.3」
『鉄道員(ぽっぽや)4Kリマスター版』
出演:高倉健、大竹しのぶ、小林稔侍、広末涼子、奈良岡朋子、田中好子、安藤政信、志村けん、吉岡秀隆
監督:降旗康男
脚本:岩間芳樹、降旗康男
1999年/113分
(c)1999「鉄道員(ぽっぽや)」製作委員会

『白蛇伝 4Kリマスター版』
出演:(声)森繁久彌、宮城まり子
監督:藪下泰司
脚本:藪下泰司
1958年/78分
(c)東映

『新幹線大爆破 4Kリマスター版』
出演:高倉健、宇津井健、千葉真一、山本圭、織田あきら、竜雷太、田中邦衛、丹波哲郎
監督:佐藤純彌
脚本:小野竜之助、佐藤純彌
1975年/152分
(c)東映

『新吾十番勝負 第一部・第二部 総集版』
出演:大川橋蔵、大友柳太朗、長谷川裕見子、月形龍之介、山形勲、岡田英次
監督:松田定次(第一部)、小沢茂弘(第二部)
脚本:川口松太郎
1959年/104分
(c)東映

『緋牡丹博徒 花札勝負』
出演:藤純子、高倉健、若山富三郎、嵐寛寿郎、待田京介、藤山寛美、小池朝雄、沢淑子
監督:加藤泰
脚本:鳥居元宏、鈴木則文
1969年/99分
(c)東映

『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声 4Kリマスター版』
出演:沼田曜一、伊豆肇、原保美、河野秋武、信欣三
監督:関川秀雄
脚本:舟橋和郎
1950年/108分
(c)東映

『飢餓海峡』
出演:三國連太郎、左幸子、高倉健、伴淳三郎、加藤嘉、沢村貞子、藤田進、風見章子、山本麟一
監督:内田吐夢
脚本:鈴木尚之
1965年/183分
(c)東映

『ビー・バップ・ハイスクール』
出演:清水宏次朗、仲村トオル、中山美穂、宮崎ますみ、本間優二、地井武男、小沢仁志
監督:那須博之
脚本:那須真知子
1985/96分
(c)東映・ウィングスジャパン

『やくざ戦争 日本の首領(ドン)』
出演:鶴田浩二、佐分利信、菅原文太、千葉真一、松方弘樹、梅宮辰夫、高橋悦史、渡瀬恒彦、西村晃、成田三樹夫
監督:中島貞夫
脚本:高田宏治
1977年/133分
(c)東映

『武士道残酷物語 4Kリマスター版』
出演:中村錦之助、東野英治郎、渡辺美佐子、有馬稲子、加藤嘉、木村功、三田佳子
監督:今井正
脚本:鈴木尚之、依田義賢
1963年/123分
(c)東映

東映チャンネル 公式サイト:https://www.toeich.jp/
東映創立70周年記念特集サイト:https://www.toeich.jp/special/toei70th_anniversary

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