史実と物語が融合する 『キングスマン:ファースト・エージェント』は原点にして異色作
実は、『キングスマン:ファースト・エージェント』は、前2作と比べるとかなりの異色作で、マシュー・ヴォーン監督が手がけた作品の中でも、どちらかといえば『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』に近い作風になっています。それが色濃く出ているのが、オックスフォード公の息子・コンラッドが身を投じることになる、第一次世界大戦の描写です。
本作で描かれる戦場の様子は、超現実的なスパイの世界とは対象的に、どこまでもリアルです。そこには、ギミックのついた傘や防弾スーツのような、便利なガジェットは一切登場しません。あるのは、あまりにもあっけなく命が奪われる戦争の悲惨さだけです。
キングスマンは、その派手な作風から登場人物の命が雑に扱われている印象があるかもしれません。ですが、一方で、喪失の悲しみの上に成り立つ物語でもあります。仲間を死なせてしまった責任感から、エグジーの面倒を見るハリー。ハリーを一度失ったことで、エージェントとして覚醒したエグジー。キングスマンの根底に流れる喪失と覚悟の物語は、ここから始まっていたのだと気付かされることでしょう。
本作はあとから作られた前日譚ですが、決してただの“あとづけ”ではありません。シリーズを1作も観たことがないという方も、既にファンの方も、ぜひこれを機に、『ファースト・エージェント』→『キングスマン』→『ゴールデン・サークル』の順に鑑賞して、キングスマンの歴史を辿ってみてはいかがでしょうか。
■公開情報
『キングスマン:ファースト・エージェント』
全国公開中
監督:マシュー・ヴォーン
出演:レイフ・ファインズ、ハリス・ディキンソン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movie/kingsman_fa.html
公式Twitter:@kingsmanjp