『呪術廻戦 0』の初動は『鬼滅』を超えるか チケットの売れ行きと作品性の違いから占う

 ついに始まる、百鬼夜行。『劇場版 呪術廻戦 0』(以下、『0』)が12月24日から公開となる。アニメで描かれた物語の一年前が舞台の前日譚である本作は、虎杖悠仁以前の主人公ともいえる乙骨憂太が、彼自身にかかった“呪い”を解くために呪術高専に入学。そこでアニメ版にも登場した禪院真希、狗巻棘、パンダらの同級生となり、教師・五条悟に導かれながら成長していく。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、五条のかつての級友であり親友の夏油傑だった。

『劇場版 呪術廻戦 0』公開直前PV|12月24日(金)公開/主題歌 King Gnu 「一途」

 公開前からのプロモーションの熱も凄まじく、原作が同じ『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)にて連載されていたこと、ダークファンタジーという似たジャンル性という意味で『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(以下、『無限列車編』)と比べる意見も少なくはない。特に『無限列車編』は日本歴代興行収入第1位を記録したこともあり、『0』の興収結果が早くも注目されている。その興収にとって肝心な初動の動きを、現状を踏まえて少し考えてみたい。

 『0』は全国379館で公開される予定で、特筆すべきは12月23日24時から開始の最速上映が全国7都市、計14館で行われることである。

 特に東京・新宿は劇中で描かれる「百鬼夜行」の舞台でもあるため、最速上映チケットが発売されるやいなや、すぐに売り切れるなど激戦区となった。TOHOシネマズ 新宿はもともと2スクリーンでの最速上映を予定していたが、その場で次に上映スクリーンを追加し、最終的には8スクリーンでの上映となる。しかも全席満席。アニメ『呪術廻戦』の最終話、ラストカットで表の通りが描かれたことでも知られ、ダブルミーニングでファンにとっては聖地とも言える新宿バルト9も同様に、6スクリーン全てが完売となっている。また、今後の展開として待ち受ける「渋谷事変」の舞台であるTOHOシネマズ 渋谷も4スクリーンが完売。ちなみに、日比谷も5スクリーンで完売、池袋も4スクリーンで完売と東京は最速チケットが全て売り切れている。それらの席数合計が6869席であったこと、また深夜開催のため18歳未満の参加が禁止されていることもあり、学生料金などの誤差は多少あるが一人当たり1900円のチケットを購入したと仮定すると、東京は一夜で1300万以上の興収となるわけだ。

 ここで気になるのが『無限列車編』の初動だが、本作の公開初日の10月16日はTOHOシネマズ新宿では42回、新宿バルト9はそれぞれ39回上映したと言う。そして16日から18日にかけて動員342万493人、興行収入46億2311万7450円をたたき出した。ちなみに『0』の初日の上映回数は、深夜の最速上映を足すと、TOHOシネマズ新宿が49回、新宿バルト9が40回、深夜の最速上映を除いた場合、TOHOシネマズ新宿が41回、新宿バルト9が34回となる。

 もちろん、両作とも事前のプロモーションとして入場者プレゼントや、ムビチケ特典などが積極的に展開されてきたし、バリアフリー上映も行われている。しかし、『無限列車編』がモンスター級の興収を出せたのは、コロナ禍であったこと、そしてターゲットとなる年齢層が低かったことも勝因のように感じるのだ。

 そもそも『無限列車編』の公開はコロナ禍の真っ只中であり、ハリウッド大作含め多くの映画が公開延期をしていた時のこと。そういった背景も含め、全国403館での上映という異例のスタートを迎えた。この時点で、公開延期していた『キングスマン:ファースト・エージェント』などの話題作と同日公開となる『0』の上映館数は下回っており、状況も違う。加えて、劇場版の“必要度”にも差があるように感じる。というのも、『無限列車編』は直前までテレビ放映されていたアニメの直接的続編であるから、今後展開されるアニメ2期を観るには“必ず観ておかなければならない”作品なのだ。対し、『0』はアニメ版の前日譚。すごく雑な言い方をすれば、本作を観なくてもその後のアニメで描かれる物語を観るうえで差し支えないのだ(情緒的な文脈では絶対的に必要なのだが)。

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