『スパイダーマンNWH』、『フォースの覚醒』超える初動 北米2000万人が鑑賞済み?

 恐るべし、スパイダーマン。恐るべし、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)。12月17日~19日の北米興行収入ランキングでNo.1に輝いたのは、やはり『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。わずか3日間で2億5300万ドルを稼ぎ出し、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)を超えて北米オープニング興収記録の歴代第3位となった。

 本作はトム・ホランド主演によるMCU版『スパイダーマン』3部作の完結編にして、過去に製作された映画版『スパイダーマン』からヴィランたちが再登場する、いわばこれまでの集大成的な一作。12月公開作品として、またソニー・ピクチャーズ作品として歴代最高のスタートを切り、すでに北米では2000万人が鑑賞したとみられている。

 海外にも目を転じれば、本作は全世界興行収入で早くも5億8720万ドルを記録し、同じく初動記録の歴代第3位となった(中国では未公開)。北米・世界の初動興収ランキングで本作の上に立つのは、第1位の『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)、第2位の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)。歴代記録のベスト3をMCU作品が占めたことになる。

 北米での調査によると、観客が足を運んだ理由のトップは「スパイダーマン映画だから」の56%。次いで「マーベル映画だから」が44%となった。そのほか割合として大きいのは、「キャスト全体が好きだから」が43%、「ストーリー」が40%、「トム・ホランド」が33%。現地ではオミクロン株の感染拡大に対する懸念が大きく、劇場興行への影響も危惧されたが、本作は友達同士やパートナーとのデートなど、2~5人での鑑賞が多かったとのデータも発表されている。

 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の2億5300万ドルという初動成績は、同じく2021年のMCU映画『エターナルズ』の北米累計興収1億6370万ドルの約1.5倍であり、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の2億2454万ドルさえ上回るもの。12月17日~19日の3日間、北米の映画館全体では2億7530万ドルの興行収入が発生したが、このうち92%が『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』なのだから圧倒的だ。まさしく本作は、コロナ禍以前の活況を映画館に取り戻してみせたのだ。

 その一方、必ずしも手放しで喜べない現状もある。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と同日公開となったギレルモ・デル・トロ監督の最新作『ナイトメア・アリー』は、第5位でランキング初登場となり、初動興収はわずか295万ドル。公開2週目の『ウエスト・サイド・ストーリー』は第3位に下がり、こちらも3日間の成績は341万ドルだ。MCUというファミリー向けの巨大ブランドに押され、大人向けの作品が興行の片隅へ追いやられたのである。

 むろん、ここには複雑な状況が絡み合っている。ひとつは、そもそもコロナ禍の影響によって作品の公開スケジュールが過密化していること。また、コロナ禍からの回復に苦戦している映画館業界が、確実にヒットする映画にスクリーンと上映回数を割くことで、興行の効果を最大化しようとすること(同時期に公開されている他の映画は優先順位が下がり、大ヒットの可能性すら乏しくなってしまう)。

 しかも『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と『ウエスト・サイド・ストーリー』、『ナイトメア・アリー』には、すべてディズニーが携わっているからなお複雑だ。『ウエスト・サイド・ストーリー』は20世紀スタジオ、『ナイトメア・アリー』はサーチライト・ピクチャーズの配給作品だが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ではマーベル・スタジオが出資の25%を負担しており、ソニーからは収益の25%を受け取る契約。商品のセールスも伸びるのならば、ディズニーとしても本作のヒットは大歓迎なのである。映画館と同じく、よりヒットする作品の効果を最大化したいと考えるのは当然だろう。

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