『この恋は初めてだから』

　『この恋は初めてだから』は、ソウル大学卒の30歳独身高学歴女子ユン・ジホ（チョン・ソミン）が、ひょんなことから人やお金にあまり興味がない独身主義者IT企業の社員ナム・セヒ（イ・ミンギ）とひとつ屋根の下で暮らすことになり、さらには契約結婚してしまうというストーリー。

　「契約恋愛から本物の恋に落ちる」という一見ありがちなストーリーだが、メインカップルのラブストーリーだけでなく、異なる性格と恋愛観を持つ3人の女性たちの人生を盛り込んだことで、様々な角度から「結婚」が何であるかを多面的に描きだしている。彼女たちの愛と人生を通して、社会で起こりうる、パワハラや就職難、非婚化など現代社会の現実的な問題を提示している。

　例えば交際5年、同棲2年目のホラン（キム・ガウン）×ウォンソク（キム・ミンソク）カップルは「結婚」に対する価値観の違いでぶつかる。結婚への焦りや重圧、意識の微妙なズレといった長年カップルのあるあるが詰め込まれ、「愛のゴール」が無条件に結婚でなければならないのかを胸に迫るエピソードで問いかける。“当たり前”とされている「結婚」に対する様々な価値観を示しながら、「どんな生き方であっても大丈夫」とそっと背中を押してくれるのだ。

　クスッと笑わされ、ぽろっと放った一言が的を得ていて、心に突き刺さる脚本センスが絶妙な、隠れ名作である。

参考

※1.https://newsis.com/view/?id=NISX20200515_0001025520&cID=10601&pID=10600