『ブルーピリオド』の没入ポイントは主人公の描き方にあり 声優・峯田大夢との親和性も
「物事を判断する時に、正解に当てはめないと不安になる」。そう思っている人は少なくないはずだ。良いか、悪いか。答えが合っているか、ハズレているのか。自分の中に確固たる軸がなければ、良し悪しで判断してしまうことは多いだろう。実際、筆者自身も例外ではない。しかし、アニメ『ブルーピリオド』を観ていると、もっと自分の思うままに判断をしてみてもいいのだと気付かされる。
現在放送されている第9話までですっかり別人のようになっている矢口だが、元は世渡り上手な不良学生。だからこそ、良し悪しで物事を判断するという気持ちがわかっていたはずだ。実際、不良をやりながらも優等生を演じてきた。親に心配をかけないよう、レールを大きくハズれることなく大学進学できるよう、勉強をしていた。渋谷の絵を描いているときも「好きなものを好きって言うのは怖い」と言っており、一般的な感覚の持ち主なのだろう。だが、絵を描くことに出会って覚醒。「良いか、悪いか」ではなく、「好きか、嫌いか」で動くようになっていったのだ。そして、それが彼の絵の描き方へとつながっていっている。
とはいえ、一気に思考を切り替えるのは難しいもの。矢口も予備校で天才たちに出会い、衝撃を受けていく中で、「なんとなく正しそう」な絵を描いてしまうシーンが多々ある。こういった矢口の人間味あるリアルな部分に共感ができるし、物語の所々でその姿が見えるため視聴者を置いてけぼりにしていない。それこそが、『ブルーピリオド』に没入できるポイントなのかもしれない。