オダギリジョー、池田エライザらが監督業に挑戦 映画を撮る俳優陣の動きから目が離せない

 俳優が映画作品の監督に挑むケースが一気に増えている。山田孝之らがプロデュースした短編映画製作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season1』では、安藤政信、三吉彩花が監督業に初挑戦。WOWOW開局30周年を記念して企画された『アクターズ・ショート・フィルム』では、磯村勇斗、柄本佑、森山未來らが短編作品を手がけた。彼らの監督業への挑戦には、どのような背景があるのだろうか。

 日本の映画界において、本業が俳優である者が映画監督を務めたケースをまず振り返ってみたい。やはりいま一番に上がるのは、脚本・演出・出演を務めたドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK総合)が大きな話題を呼んだ、オダギリジョーによる長編デビュー作『ある船頭の話』(2019年)だ。この2作を並べたときにくっきりと浮かび上がるのは、前者が突飛なコメディであるのに対し、後者が上質なヒューマンドラマであること。オダギリは俳優としてだけでなく、映像作家としても引き出しの多さを示し、非凡な才能の持ち主なのだということを再認識させられた。両作品に出演している柄本明や永瀬正敏、橋爪功など映画界の中心に立つ俳優の存在や、『ある船頭の話』に関していえば、撮影監督をクリストファー・ドイルが、衣装デザインをワダエミが務めている事実から、オダギリが一人の映画人として歩んできた軌跡が垣間見えることだろう。クリストファー・ドイルはウォン・カーウァイ監督やチャン・イーモウ監督、アレハンドロ・ホドロフスキー監督らの作品で撮影を担当し、ワダエミは黒澤明監督作『乱』(1985年)などで衣装デザインを担当。両者ともに世界的な映画人である。

 オダギリ作品の説明が長くなってしまったが、同じく2019年には水谷豊が『轢き逃げ 最高の最悪な日』(2019年)を手がけている。これは水谷にとって2作目だが、初めて彼の監督作を観た方は、脚本・監督を務めたその手腕に驚いたのではないだろうか。とあるひき逃げ事件をきっかけとして展開していくサスペンスフルな物語と演出には、公開当時多くの観客が唸っていのが記憶に新しい。その前年の2018年には、斎藤工が“齊藤工”の名義で初長編『blank13』を手がけているし、昨年は池田エライザが初監督した『夏、至るころ』が公開され、日本が誇る名バイプレイヤー・田口トモロヲはこれまでに、『アイデン&ティティ』(2004年)、『色即ぜねれいしょん』(2009年)、『ピース オブ ケイク』(2015年)を監督。小栗旬は2010年に『シュアリー・サムデイ』を、竹中直人は代表作『サヨナラCOLOR』(2005年)の他にいくつもの映画作品を手がけている。

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