『最愛』吉高由里子が泣き芝居で見せた梨央の“絶望” 情報屋の眼差しには変化が?

 梨央(吉高由里子)の歩みは、最愛のものが次々と奪われていく人生だった。優しい父・達雄(光石研)に守られ、白山大学陸上部の仲間たちと過ごした穏やかな毎日。かわいい弟・優(柊木陽太)の持つ影を取り払うべく、新たな薬を作るという夢を目指して勉学に励み、初恋の人・大輝(松下洸平)への想いも、上昇していく力になった。

 満ち足りた人生。「何も怖くなかった」と梨央は振り返る。だが、その幸せは招かれざる客である渡辺康介(朝井大智)によって、無残に壊されてしまった。康介を刺してしまったのは優。そしてきっと埋めたのは達雄。その達雄は罪をかぶるように命を落とし、梨央は温かな居場所だった寮から飛び出さなくてはならなくなってしまう。大輝への想いも心の中の箱に閉じ込めて。

 金曜ドラマ『最愛』(TBS系)の第3話では、最後の最後に残ったと思われていた最愛の弟・優までもが梨央のもとを去っていたことが明かされる。自分が犯した罪を思い出したという優は、自分が朝宮優であったことも、梨央の弟であったことも忘れたいと、姿をくらましてしまったのだ。

 会うことも叶わない。唯一の最愛のものに拒絶された梨央は、これまでこらえてきたものが堰を切ったように溢れ出し、加瀬(井浦新)が見守る中泣きじゃくる。その姿は、女優・吉高由里子の「絶望する姿が見たかった」という新井順子プロデューサーの見立てた通り、誰もが息を呑む迫真の演技だった。

 それからの梨央は、新薬開発の夢だけを追ってきたのだ。若手女性社長として注目を集めるが、暮らしはまるで学生のまま。壁には優から月に1度届く「僕は元気です」のメッセージが添えられたポストカードが埋め尽くす。毎朝、なんのために生きているのかを確認するかのように、「おはよう」と声をかけつづけてきたのだろう。

 行きつけの鉄板焼店「峰」では手慣れた様子で、冷蔵ケースから瓶ビールを手に取り、喉に流し込む。真田家が食事をする華やかなレストランとは全く違う、まるで寮のような雰囲気が梨央にはやはり心地いいのだと伝わってくる。

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