『SLAM DUNK』映画化で振り返る“90年代アニメ事情” 名作リメイクの意義とは
そして90年代になると、それまでの玩具メーカーなどだけでなく、OVAをはじめとするアニメ関連物の好調を受けたビデオメーカーがテレビアニメの製作にも進出する。この時、テレビアニメがアニメのパッケージ(ビデオやDVD)の宣伝という位置づけとなり、現在まで続くハイエンドな作品を好むユーザーをターゲットにしたテレビアニメの潮流が形作られた。その象徴ともいえる作品が1995年にテレビ東京で放送された『新世紀エヴァンゲリオン』だろう。同作は本放送こそ毎週水曜18時30分からという時間帯だったが、1997年の劇場版公開直前に行なわれた深夜帯での再放送で人気が爆発した。それ以前にも『エルフを狩るモノたち』(テレビ東京)などビデオメーカーが制作の主体となり、23時以降のいわゆる深夜帯に放送されるテレビアニメはあったものの、定着したのは社会現象とまで評された『新世紀エヴァンゲリオン』のヒット、特にビデオパッケージのヒットによるところが大きい。1980年代のアニメブーム時に10代だったアニメファンが、20代半ばから30代となり可処分所得を得始めた頃でもあり、この深夜アニメとビデオパッケージの販売の組み合わせは、次第にアニメビジネスの主流となった。それによってテレビアニメに、かつてのOVAのようなハイエンドを好むファン向けの作品が増えていく一方で、夕方やゴールデンタイムに放送されていた少年・少女漫画の原作モノや、玩具メーカーの販促色の強い作品は減少していった。
先日、「映画『SLAM DUNK』を井上雄彦が手がける理由とは?」記事内で、90年代のアニメシーンについて触れた際「現在ほど原作漫画の再現性にこだわった作品は多くなかったように思う」と書いた。今にして思えば、当時少年漫画誌はすでに大学生や社会人までを対象読者にしていたのに対して、それらを原作としたテレビアニメは1980年代時のママにメインの視聴層を小学生高学年から中学生に設定していたように感じる。
テレビアニメの誕生から60年近くが経過し二世代三世代を経て、アニメへの偏見をなくしたいまだからこそ、90年代にキッズ・ファミリー向けにアニメ化された名作漫画を、現在の技術と視点で大人の鑑賞にも堪えうるようにリメイクすることには、意義があると思うのだ。
■公開情報
映画『SLAM DUNK』(タイトル未定)
2022年秋公開
監督・脚本:井上雄彦
配給:東映
(c)I.T.PLANNING,INC.
(c)2022 SLAM DUNK Film Partners
公式サイト:https://slamdunk-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/movie_slamdunk/
公式Instagram:https://www.instagram.com/slamdunk_movie/
公式Facebook:https://www.facebook.com/movie.slamdunk/