『おかえりモネ』三生の指摘に落ち込む百音 サヤカが授けた先駆者の知恵とは
『おかえりモネ』(NHK総合)第107話で漁協を訪れた百音(清原果耶)は、組合長の慈郎(菅原大吉)に気象情報サービスを売り込もうとする。海水温の上昇が続くと予想を伝える百音に、慈郎は「何年かしたら、元に戻るっつうことはねえの?」といまひとつ乗り気ではない様子。周りの組合員も「悪くなる予想ばっかりされても困んのよ」と耳を貸すどころか、迷惑がっているようにも見えた。
ゼロから仕事を立ち上げる苦労を百音は経験している。何もないところから、それなりに仕事として成立するレベルまで持ってくるのは想像以上に大変だ。2年で結果を出すと安西(井上順)に約束した百音は、悠人(高田彪我)のつてもあって、海のまち市民プラザにウェザーエキスパーツ気仙沼営業所を開設。コミュニティFMで気象コーナーを担当することになったが実質無給である。気仙沼に戻って1カ月、そろそろ目に見える成果が欲しい。
百音が偉いのは、粘り強く何度もトライするところ。それでも、自分のことを知る友人の指摘はストレートに刺さる。悠人には「けあらし観光ツアー」の提案書を返され、坊主DJが好評な三生(前田航基)から「モネは東京いた方がよかったんじゃないの」と言われてしまう。「俺は寺、悠人は市役所、りょーちんは漁師、みーちゃんは水産試験場。言い方悪いけど、そういう仕事じゃないとなかなか認めてもらえないっていうのはあんだよ。俺がみんなにかわいがられてんのは、俺が寺の副住職だからだよ」。それを言ったらおしまいではとも思うが、百音は「三生は三生だからだよ」と返すのが精いっぱいだった。
地元の分厚い壁に阻まれた百音。そんな百音を、登米のサヤカ(夏木マリ)は「100年早い」と突き放す。「私が何年かけて、ここの人たちに認められてきたと思ってんの?」「まだほんのひと月やそこらで甘いよ」。同時にサヤカは、百音に自身が手にしているものの大きさも気付かせた。「毎日決まった時間に天気予報を伝えてきたのは、ただ単にお天気を伝えるためだけじゃないでしょ?」。サヤカの言葉は、今の方向性は間違っていないと百音の背中を押してくれた。「認められるっていうのは、信用されるってこと」であり、地元に根ざすことは、木が育つことと同じように時間がかかるものなのだ。祖父の龍己(藤竜也)が「しぶとく行け」と話したように、地域で生き抜いた先駆者の知恵が百音を支えている。