蒔田彩珠、『おかえりモネ』での成長をどう見せる? 是枝裕和らのもとで得た演技力

 未知は、家族や百音の仲間たちといる時に素直で明るい笑顔を見せるが、ふとした瞬間に暗く悲しげな目線を送ることも多く、百音とは違い、実際に島で震災を体験したことで責任感が芽生え、今の生き方を我慢しているのではないかと思われる。蒔田は、ある意味百音の呪縛に囚われ、相談できる相手がいない未知の孤独感を感じさせる静かな芝居を見せている。ただ、片思いをするりょーちんこと及川亮(永瀬廉)に出会うと、パッと表情が明るくなり、他愛のないことを嬉しそうに語る時だけ年相応の少女になるのは、島に残る理由の1つを示しているようにも思える。でも亮は百音が好きで未知の思いは届かない。だからこそ、未知が東京に来た際に、島で辛い思いをする亮も心の救いを求めて東京に来て、百音だけに辛い本音を話したことに、「逃げたくても逃げられないじゃん、だって誰かが残らなきゃ」という言葉の後に、「なんでお姉ちゃんなの」と嫉妬の怒りをぶつける。責任感を持って未知も島に残ったこと、そしていつも近くにいるのに亮は百音を選ぶ嫉妬心。その感情が重なり、涙を流しながら本音が爆発する思いが痛いほど伝わり、これまで蓄積された未知の内面をしっかりと表現している。

 ここでスッキリして大人になった未知が見られるかと思いきや、百音の恋人直前だった菅波光太朗(坂口健太郎)に、2人が会っていることを告げ口をするという、完全に仲を壊しにかかる復讐劇に。亮の思いに答えなかった百音に「おねえちゃん正しいけど冷たいよ」と追い討ちをかけるように言い放ち、亮に関して「私がそばにいる」と宣言して東京を後にする。

 それから3年ほどの月日が経ち、実家付近で竜巻が起こったことで今週島に戻る百音。予告には未知と亮の距離が近くなっている姿が映っているが、未知はどう成長した姿を見せるのか。『朝が来た』でも、一瞬で月日の変化を感じさせた女優なので、新たな“みーちゃん”ならではの演技に期待したい。

 思春期特有の心の迷いや葛藤を演じ、絶賛されてきた蒔田だが、今後は実年齢の成長とともに演技の幅がさらに広がっていくはず。今回の『おかえりモネ』の三角関係の演技を見て、より大人の恋愛劇での姿も期待できそうだ。今後はアニメ映画『神在月のこども』の公開が控えているが、演技力と淡々とした声でラジオドラマでも才能を発揮しているだけに、声優としても今後の活躍が期待できる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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