『レミニセンス』リサ・ジョイ&ジョナサン・ノーランに聞く、映画とTVドラマの未来

ノーラン「映画というフォーマットで、映画館で観てもらうのがベスト」

ーー今回の作品は、アメリカでは劇場公開と同時にHBO Maxでの配信となりました。映画館で観るか自宅などで観るかという選択肢が増えたことも含め、昨今は映画とドラマの垣根がなくなりつつある印象です。TVシリーズも手がけられているお二人は、この現状についてどのような見解を持っていますか?

ジョイ:今はとても特殊な瞬間だと思っています。パンデミック中であり、場所によっては状況がすごく悪かったりする。安全に過ごさなければいけないし、健康でいなければならない。何よりそれが一番大事だと思っています。皆が安全であることが何より大切。でも、正しい予防策を取れば、状況が良くなるときもある。普段通りの生活に少しでも戻れるなら、それは素晴らしいことです。人と繋がったり、人と会ったり、外を歩き回ることは私たちの心のためにも感情のためにも必要なことだと思うから。そんな中、映画やTVの未来がどうなるのかを、いま想像するのはとても難しいことです。現状があまりにも特殊で、稀で、多くの人にとって辛いものだから。いつになるかわからないけれど、この時期が終わったら、あるいは社会がコロナを上手く組み込むことを学んだら、多くの人が人との繋がりを求めるだろうし、繋がる方法として文化的なイベントで空間を共有することを求めると思っています。とはいえ、家でTVを観るのが好きな人もたくさん知っているので(笑)、どちらが良いということではありません。

ジョナサン・ノーラン:僕は運が良くて、映画とTVドラマの仕事が半々のキャリアを歩んできています。この2つには間違いなくはっきりとした違いがあるとも思っています。リサ(・ジョイ)の『レミニセンス』のように、劇場以外で観ることを想像できないというか、映画館で観ることで明確に恩恵を受けるストーリーというものもある。また、人と一緒に観ることには、他と違う何かがあると思っています。家で家族と観るのもいいけれど、見知らぬ人と一緒に暗い部屋という公の空間で「幻覚」や「経験」を共有体験できるのは映画ならでは。その体験が失われることになるようだったら本当にもったいない。僕は両方のメディアが好きです。でも、『レミニセンス』のような体験は、やはり映画というフォーマットで、映画館で観てもらうのがベストだと思っています。

ジョイ:私は今作を“映画”としてデザインしました。アナモルフィック(シネマスコープ映像を撮影するために開発されたレンズ)で撮影したし、シーンをスケッチしているときも、まるで水に囲まれた街の中を浮遊しているような感覚になるような感じで、大きなスクリーンで観てもらうことを想定して描いていました。TVドラマを監督しているときは、各ショットをまた違った形でデザインしていきます。小さなデバイスで観られることがわかっているし、美的感覚という意味でも、アーティスティックな意味でも、そのことは構図に影響を与えます。それについては考えました。でもやはり長期的に考えると、何よりも皆に健康でいてほしいし、今は誰もが安心して映画を楽しめないのもわかっている。だから映画館で『レミニセンス』を観てくれたらそれはもちろん嬉しいけど、安心して観てもらうことが一番大事だと思っています。

■公開情報
『レミニセンス』
全国公開中
出演:ヒュー・ジャックマン、レベッカ・ファーガソン、タンディ・ニュートン
製作:ジョナサン・ノーラン、リサ・ジョイ
監督:リサ・ジョイ
配給:ワーナー・ブラザース映画
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