中川大志、『ボク恋』で証明した多彩な演技 アクションからラブコメまで全ジャンル対応?
『ボクの殺意が恋をした』(読売テレビ・日本テレビ系)は、柊(中川大志)の成長物語だったのかもしれない。純粋だった青年が、人を疑うことを覚え、信じていた相手に騙される。それでもまた、誰かを信じていく……というような。
第5話で「秘密編」が開幕してからは、柊の苦しむ表情を見て胸が締め付けられた。愛する人・葵(新木優子)が、柊の育ての親・丈一郎(藤木直人)を殺したと確信した時。実はその葵ではなく、ずっと信じていた詩織(水野美紀)が犯人だったと知った時。「恋」と「殺意」の間で揺れ動く心を、中川は繊細に表現していた。序盤はかなりコメディ色が強かったため、こんなに感動させられるとは……と正直驚いている。
本作を通して改めて感じたのが、中川の多彩さだ。演じた柊は、“とにかく間が悪い”殺し屋だが、中川自身は間の取り方が絶妙にうまい。とくに、風岡(中尾明慶)とのやりとりのシーンでは、それが見事に発揮されていた。サスペンスでありながらも、クスッと笑えてしまうのだ。コメディ要素が強かった序盤は、面白い表情を求められることも多かったが、どれを切り取っても同じ表情がない。きっと、毎回丁寧に考えていたのだろう。「面白い」演技もこなせることは、さらなる飛躍に繋がっていくはずだ。
さらに、シリアスな場面でも中川の魅力は発揮される。なかでも印象的なのが、圧巻のアクションシーン。序盤のコミカルな雰囲気を、ビシッと引き締める役割を担っていた。第3話、デス・プリンス(鈴木伸之)と戦う場面では、木によじ登ってからの飛び蹴りを披露。第8話では丈一郎とともに、スーツを着たままの華麗なアクションに挑戦した。技に集中しながらも、表情からは切なさや苦しみが伝わってくるのが、中川のすごいところである。
また、恋に悩むシーンでは繊細な演技を見せていた。ラブストーリーは、恋が実るまでの障害がつきものだが、本作は「殺意」が入り混じっているため、一筋縄では行かない。「どうして、一番好きな人を憎まなきゃいけないんだ……」と涙を流す姿は、見ているこちらまで苦しくなるほど。葵を殺害することを決意し、拳銃を向けた時の「こっち見るな!」と言った時の表情からは、さまざまな感情が交錯しているのが伝わってきた。