『TOKYO MER』が突きつける不条理な死 佐藤栞里が演技のポテンシャルを開花

 『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)第10話。喜多見(鈴木亮平)の空白の1年が暴露され、MERは存続の危機に陥る。活動休止を求める声に「それはできません」と喜多見は即答。「解散になるかもしれませんが、できる限りのことをしていくつもり」と言明する。ただし、メンバーに迷惑をかけないため「私1人でやれることをやらせていただきます」。世間を敵に回して、たった1人の戦いが始まった。

 関東医科大学の校舎に爆弾を仕掛けたとネットに書き込みがあり、予防的医療事案として喜多見は出動。厚労省の技官でMERの解体を目論んでいた音羽(賀来賢人)は、「監督省庁の官僚として見届ける義務がある」と主張して喜多見に同行。何のめぐりあわせか、MER解体の瀬戸際で結成された喜多見と音羽の最強バディに期待が高まった。冬木(小手伸也)や比奈(中条あやみ)、夏梅(菜々緒)たち兼任メンバーが無線で見守る中、到着したキャンパスで爆破が起き、喜多見と音羽は負傷した学生の救護に向かう。

 だが、状況はまったく予断を許さない。爆弾テロの主犯はエリオット・椿(城田優)で、椿は電話越しに教室内に協力者がいることを告げ、建物から出るなと指示。出たらもう一つの爆弾が起動し、死者が出ると脅迫する。椿は、公安の南(三浦誠己)に民自党幹事長の天沼(桂文珍)が厚生労働大臣の時、関東医科大学を認可した際に裏金を受け取った証拠を公表するように要求。また椿は喜多見に匿名のメールを送信していた。メールの文面は「爆破前に連絡する。変化があれば報告しろ」。まるで仲間であるかのような文面には、喜多見をテロリストに仕立てる意図が読み取れた。

 これまでの放送回では、命を救う人間はヒーローであるというメッセージが繰り返し発信されてきた。感染症によって多くの人が自宅や病院で闘病している現在、このことはどれだけ強調しても強調し足りない事実である。では、寸暇を惜しんで診療や看護にあたってくださる医療従事者の方々の胸の内はいかばかりだろうか。第10話で孤立無援の状況で救護にあたった喜多見と音羽がその一端を教えてくれた。

 教室に閉じ込められた学生たちは、SNSで喜多見がテロリストとして疑われていることを知る。喜多見は公安から椿について知っていることを吐くように言われる。理解者がいない四面楚歌で、喜多見は「俺は医者です。命を救うのが仕事です」と救命措置に力を注ぐ。学生たちは喜多見を疑い、資材の置かれた部屋に監禁。喜多見を信用できないという学生に音羽は「くだらない噂に振り回されてないで、あの人が何をするのか、その目で見て判断しろ!」と一喝。戻ってきた喜多見の言葉が全てを物語っていた。

 「俺たちは応援をされるためにやってるわけじゃない。どんな批判をされてもかまいません。だけど命を救うことには手を貸してほしい!」。医者の卵である学生たちを信じて呼びかける言葉には、医療者としての矜持や誇りが込められていた。たとえ非難されても、命を救うためには全力を尽くす。だから喜多見は椿を助けた。そんな喜多見の思いを椿は容赦なく踏みにじる。

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