『ラブライブ!』シリーズが長く愛される理由とは? μ'sの成長描いた第1作を解説
いまから11年前、『電撃G's magazine』2010年8月号が異常なまでの売り上げを飛ばしていたことを覚えている方はいるだろうか。
当時Blu-ray/DVDが初週合算3万枚以上の大ヒットとなったアニメ『Angel Beats!』第1巻は、4週連続でBlu-rayランキング首位を獲得してきた『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』をストップさせたほどだ。
それほどに盛り上がっていた『Angel Beats!』の人気キャラといえば、花澤香菜演じる“天使ちゃん”だ。『電撃G's magazine』2010年8月号では、表紙・付録に彼女のねんどろいどぷちが付属されは、Amazonや書店で即完売。公式サイトでお詫び文が掲載され、異例の増版がなされても複数買いが続いて品薄が続くほどの売り上げを残した。
この号で、登場人物、企画内容、簡単なストーリーを小さいながらも告知していた作品がある。本稿の主役『ラブライブ!』である。
ここから約3年後の2013年1月、μ'sを主役とする『ラブライブ!』が放映され、それ以降の盛り上がりと影響力はご存知の通りだろう。今回は、μ'sと第1作『ラブライブ!』が長く愛される理由・きっかけについて綴ってみたい。
今作を支える柱や魅力はいくつかある。スポ根、美少女アイドル、女子高生、ミュージカル、アニメーションの進化、楽曲の振れ幅、リアルライブでのアニメ演出とのシンクロナイズ、どれもが視聴者にとって、分かりやすくポップな表現になっているともいえよう。
その分かりやすさは、エンタメ特有の構文・コード・お決まりといったツカミによる部分が大きい。こういった「お決まり」ともいえる部分は、アニメだけではなく、音楽・マンガ・映画・ドラマ・お笑い・特撮に至るまで、エンターテイメントを好きな方ならばある程度解読でき、楽しめるものであろう。
『ラブライブ!』第1話冒頭では、自己紹介と廃校の危機を伝え、終盤には序盤で流れていた映像から繋がるように、歌とダンスでパフォーマンスがくり広げられる、ミュージカルの流れを模している。
会話劇も同様だ。どのキャラがボケの立場で、どのキャラがツッコミの立場かが内在的にあり、キャラ同士の会話のパス回しのなかで自然と期待できてしまう。テンドンネタ、顔芸、一つ一つの所作にしても、アニメ的表現によって現実ではあり得ないような動きで拍車が掛かれば、コミカルに観るものを笑わせにくる。
画面端からノケぞるように出てくる南ことり(内田彩)、トランプで負けたときの園田海未(三森すずこ)、褒められると頬を染めて否定するツンキャラの西木野真姫(Pile)などは、その典型例かもしれない。
作品を見ていると、ヒロイン・高坂穂乃果による無鉄砲な行動の数々や気恥ずかしさをもろともしない振る舞いの連続に、見ているこちらが恥ずかしくなって再生を止めてしまう人もいるかもしれない。高坂含めた9名の女子高生が廃校阻止に向かってエネルギッシュに邁進していこうという姿、そうしてアイドル活動を経て成長していく姿は、本作の魅力になっている。