複数の“愛”の謎を解き明かす物語 『親愛なる君へ』が描く現実は決して他人事ではない

 それぞれ描かれる時間軸は違うが、共に、苦難に満ちた日々の中で、どこか、生より死に魅せられ、吸い寄せられているように感じるシウユーとリーウェイ。他者から向けられる偏見、貧困、病気。どこまでも過酷な、彼らを取り巻く状況は、決して他人事ではない。

 でも、そんな中で、真っ直ぐに彼らを照らす光がある。あまりにも美しいジエンイーとリーウェイの蜜月の日々、そこに息子・ヨウユーが加わった3人家族が花火を楽しむ様子、ヨウユー、ジエンイー、シウユー3人で撮った幸せな家族写真。血は繋がらないけれど、ゆっくりと家族になっていった彼らの輝かしい日々は、誰も奪うことができない。

 そして、それらの記憶を愛おしげに抱きしめたまま、今を生きていく人々の姿もまた美しい。たとえ、愛する人がもう手に届かないところにいたとしても、彼らは手を伸ばす。何とかして触れようとでもするかのように。どうにかして身体を寄り添わせ、呼吸を合わせようとする。ピアノ教室の講師でもあるジエンイーと、ヨウユーが奏でるハーモニーは必聴である。

■公開情報
『親愛なる君へ』
シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開中
監督・脚本:チェン・ヨウジエ
監修:ヤン・ヤーチェ
出演:モー・ズーイー、ヤオ・チュエンヤオ、チェン・シューファン、バイ・ルンイン
配給:エスピーオー、フィルモット
2020年/台湾/カラー/106分/シネマスコープ/5.1ch/原題:親愛的房客
(c)2020 FiLMOSA Production All rights
公式サイト:filmott.com/shin-ai
公式Twitter:@filmott

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